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観察

 「オォォォッッ!」


 オークが雄叫びを上げ魔剣を肩に担ぎ、その巨体を左右に揺すりながらこちらとの距離を詰めてくる。

 が、武器は抜かずその動きを焦ることなく観察する。些細な動きも見過ごさぬように全体を眺め、しかし、意識の半分は魔剣へと向けその動向に注視する。

 そして、互いの距離が詰まり魔剣の間合いに入った瞬間、オークが魔剣を振りかぶり上段から力任せの強撃を放ってくる。

 またこの攻撃か、と思いながらも全力で真横に跳躍してその攻撃の範囲から抜け出す。直後に轟音が響き、爆炎が吹き荒れる。

 オークの上位種ということで通常個体と比べ、最初そのパワーとスピードには驚かされたが、冷静になり観察してみるとその動きは筋力に頼り切った直線的な動きばかりで読みやすく、攻撃後は隙だらけだ。だからといって安直に攻めれば、その圧倒的な膂力が生み出す強烈な一撃を貰いかねないので不用意に反撃することはできないが、それを考えないのであれば今のように簡単に避けることはできる。

 正直投擲を用いた攻撃手段ならば今すぐにでも反撃を与えることは可能なのだが、セシリィやミーティアの渾身の一撃でさえ多少の手傷を負わせる程度なのだから、たとえ武器を使っての投擲だろうとそれが通じるとは思えない。

 だからこそ、今俺は魔剣に注目している。

 オークは相手が近距離にいる場合、魔剣に炎の力を溜めそれを地面に叩きつけることで前方へと爆炎を巻き起こし、相手が中距離にいる場合、魔剣から火球を生み出し撃ち放つことで離れた場所にいる相手にも攻撃が可能となっている。

 その魔剣がもたらす強大な能力はただでさえ厄介なオークの強さを何倍にも高めている。が、その能力を発動させる起点、刀身が淡く発光する瞬間、そこを狙えばもしかすると能力を暴発させることができるんじゃないかと睨んでいる。

 俺自身の攻撃が通じなくても、あの魔剣の高火力を暴発させることであのオークにダメージを与えることができるかもしれない。

 セシリィとミーティアが何か秘策を準備しているようだが、それが確実にあいつをどうにかできるものなのか分からない以上、少しでも可能性があるならそれを実行に移すべきだろう。

 それに、今あのオークは俺に敵意を向けているが、セシリィたちの秘策次第では矛先があちらに向く可能性もある。その可能性を少しでも削るために、痛みを与えることでこいつの怒りを更に俺に向ける。ヘイトコントロールというやつだ。できるかどうかは分からない、けど投擲に関してはある程度自信を持っている。だから、後は成功させるために必要な状況をどうにかして作り出す。まずはそこからだ。

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