小休止
「え? まじで!?」
みんなと合流を済ませ、お互いの戦果を報告し合っていたところ、向こうでは思わぬ結果が出ていたことに、驚きの声を上げてしまう。
「アンちゃん達よりも先に倒したって……いや、本当すごいよ」
『えへへ』
「うん。まぁ、相性が良かっただけっていうのもあるけどね」
クレアとミリオ。
この二人が、あのアンネローゼとテレサよりも早くトレントを討伐するという偉業を成し遂げたのだから、無理もないというものだろう。
「むぅ~! アンも頑張ったのに~!」
こと勝負事においてほぼ無敗を誇っていたアンネローゼは、負けたことが余程悔しかったのか、握り締めた拳を胸の前でぶんぶんと振り、その心境を表しているようだった。
「すみません、アンネローゼさん。私も攻撃に参加することができていれば、結果も変わっていたかもしれないのに」
申し訳ないとばかりの面持ちで、テレサは彼女に謝罪する。
「う? なんでテレサンが謝るの?」
一転して、きょとんとした顔で、目を伏せたテレサの顔を覗き込むアンネローゼ。
「え? あれ? 私のせいで一番になれなかったことを怒っていたんじゃ?」
アンネローゼの思考がまるで読めないせいか、こちらもまた不思議そうな顔をして、見つめ合う二人。
そのやり取りを見ていたミリオは、それを軽く笑い、「違うよテレサ」と言って、口を挟む。
「アンは別に怒ってるわけじゃないんだ。そもそも、テレサの魔術は直接的な攻撃手段じゃないんだから、当然だよね」
それはその通りだろう。
彼女の得意としている魔術は妨害や弱化が主であり、それ以外で中級の魔物相手に対して決定打になるようなものはないからな。
「では?」
「うん。ただ、褒められたかっただけだと思うよ」
「……はい?」
……あー、そういうことか。
ミリオの言葉を聞いて、心の底から納得する。
最初からこの戦闘では勝ち負けを争っていたわけでもなし、そもそもアンネローゼっていう子が重要視しているのは、そこだもんな。
「かっ! 相変わらずガキ臭ぇやつだな、てめぇはよ」
「べぇ~! ガキっていう方がガキなんだよ~だ」
「あ? ざけんなコラ」
呆れた様子でそう溢したガルムリードに、アンネローゼが言い返し、子供のような小競り合いが勃発する。
「あはは。本当に二人は仲がいいね」
楽しそうにその様を見守るミリオに釣られ、俺たちも堪えきれずに笑いが漏れてしまう。
それに反応したガルムリードは、「けっ!」と悪態をついてみせ、アンネローゼは一緒になって笑っていた。