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ディラック10

 ──数日後。


「そんじゃ、こっからは歩きになっから、ちゃちゃっと荷下ろし済ませるぞ。ほれ、降りた降りた」

「はいよっ、と。うわ、腰痛ってぇ……」

『……うん。ずっと座りっぱなしだったもんね』


 馬車から降り、凝り固まった筋肉をほぐしていく。

 というかこの馬、飯食べる時以外ずっと走りっぱなしだったから、そのせいもあってか、道中にあまり戦闘をしなかったにもかかわらず、それなりに疲労感がある。


「なんだお前、もうバテてやがんのか? かぁ~っ、なっさけねぇ野郎だな」

「いや、逆になんで他のみんなが平気なのかが俺には分からないんだけど」


 周りを見ても、ぐったりとしているのは俺とクレアぐらいのもので、ガルムリードとテレサは当たり前のように荷物を下ろし始めているし、アンネローゼに至ってはまだ寝たままで、ミリオに起こされている。


「お前は普段が貧弱すぎんだよ。もっと体鍛えろ。もしくは慣れろ」

「まぁ、それは確かに、うん」


 急に体を強くもできないし、すぐに慣れるのも無理だけど、どうにか頑張るしかないよな。こればっかりは。


「ほら、アン。降りるから気をつけて」

「……うにゅ~? ふわぁ~、んんっ。は~い」


 そうこうしている内にアンネローゼが起きたのか、寝ぼけまなこの彼女の手を引いて、ミリオが馬車から降りてきた。

 そして、各々が支度を整えたところで、先に作業を始めていた二人と合流し、後ろの荷台から積み荷を下ろしていく。


「失礼。少しいいだろうか?」


 と、それが終わるかどうかというタイミングで、後ろから声が掛かった。

 それは、この任務に参加している三つのパーティー、そのうちの一つのリーダーを務めている人物、フェイリアスさんだ。


「おう。どうしたよ?」

「そう大したことでもないのだが、偵察に出していたウチの斥候が行く手に魔物の一団を発見した。私のパーティーがこれを殲滅してくるので、少しばかりこちらで待機を願いたい」

「あ? なんでだよ。んなもん、全員で適当に片づけながら進めばいいだろうが」

「いや、安全面を考慮してのことだ。このようなところで無駄な危険に晒すこともないだろう」


 ちらりとこちらを見て、彼はそんなことを言う。


「ん? あぁ、こいつらの心配してんのか。なんだお前さん、過保護だねぇ」

「そういう問題なのか?」

「おう。要はあれだろ? お前はこいつらの強さを信用できないから、お前らで守ってやろうって、そういうこったろ?」

「……確かな実力を示す実績がない以上、彼らを下級冒険者として扱うのは当然のことだと思うが?」


 フェイリアスさんの当たり前な理屈を聞いて、しかしディラックさんはそれを鼻で笑ってみせる。


「はっ。肩書きなんざ、所詮はお偉いさんの決めた飾りだろうが。重要なのは、相手がなんであれビビらずに立ち向かっていけるやつだ。そういうやつらは強くなる。なら、とことんまで追い詰めてやんのも、俺ら上のもんの務めだろうよ」

「それで死ぬことになったとしても?」

「当然だろうが。その程度で死ぬやつは、いずれどっかでおっちぬのが関の山だ。未来なんざねぇよ」


 とんでもなく物騒なことを口走るディラックさんだが、それに関しては異論がないのか、フェイリアスさんは特に反論をせず、顎に手を当て何かを考えているようだった。


「では、どうするというんだ? ここまでのように今度の魔物も各々で撃破するのか?」

「いや、それじゃあ面白くねぇからな。こいつらだけでやらせてみようぜ?」

「なに?」

「もちろん俺が補助に回る。だから、その内容次第で、お前はそのあとの対応を考えればいい。それでどうだよ?」

 

 と、そんな感じで俺たちを置いてきぼりにしたままで話は進み、なぜかこの先にいる魔物とは俺たちだけで戦う運びとなってしまった。


「ちなみに、その魔物っていうのは?」

「あぁ。周囲の木々に擬態しているトレントという魔物だ」

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