ディラック6
『アクティブスキル《強制発動》起動──パッシブスキル《起死回生》限定発動。パッシブスキル《獣の衝動》限定発動』
合わせるようにして自身の最大強化を完了させ、一切の躊躇もなく全力の一撃を叩き込む。
「おぉぉあっ!!」
凄まじい力で大地を踏み締めて繰り出したそれは、先ほどまでとは比べるまでもないほどに速く、地面から足が浮いてしまっている相手には避けようのないものだ。
──そのはずだった。
「へっ! 甘ぇよっ!」
完全に落とし穴に足を取られていたはずの赤鎧は、剣の重みを利用して空中で体を回転させ、こちらの攻撃を避けると同時に正確無比な蹴りを放つと、俺の握っていた剣の柄頭を捉え、そのあまりの衝撃に武器を手放してしまう。
「嘘だろっ!?」
あの状態から、あの一撃をあれだけ正確に対処されたことに動揺し、瞬間的に思考を放棄してしまう。
「足止めたな?」
何気ないその一言に、ぞくりと悪寒が走るほどの圧を感じた時には、すでに赤鎧は剣を構え終えたあとだった。
なのに、集中力を欠いた今の状態では《行動予測》による攻撃の軌道も読めず、こちらを焦らせるように《危険察知》の警鐘だけが頭の中に響き続ける。
「よぉ。今度のも受け止められるか?」
まるで死刑宣告とも取れるような言葉を嬉々として放った赤鎧は、引き絞るようにして力を溜めていた構えを解き、こちらを確実に打ちのめす一撃を放った。
「《アースウォール》!」
だが、それがこちらへ到達する直前、地面から斜めに飛び出した土壁が俺の胸元を強く押し、強制的に体が後方へと突き飛ばされる。
「っ! げほっ、げほっ!」
突然の衝撃を受けたことにより、無理やり気味に意識が引き戻され、無意識に止めてしまっていた呼吸が再開されたことにより、肺が驚きむせてしまう。
「おいおいおい。さっきからいいところでお前はよぉ……」
土魔術を発動させたであろう、ミリオに赤鎧の敵意が向いたようだが、そんな相手の意識が切り替わった瞬間を狙ってか、高速でこちらに向かってくる気配が一つあった。
「うりゃあー!」
槍を携え、とんでもない速度で飛び込んできたアンネローゼは、赤鎧の足を払うように武器を振るう。
「ちっ!」
それを面倒くさそうに剣で叩き伏せようとする赤鎧だが、アンネローゼは瞬時に槍を引き戻し、小さく跳躍することで剣を躱してみせると、遠心力を利用した縦の一撃を放つ。
「よいしょー!」
当然、その大振りな一撃は容易に受け止められてしまい、赤鎧がそれを力押しで弾き飛ばそうとした瞬間、アンネローゼは力の加わる方向に体を回転させ、相手の力をも利用してその速度を上げ、凄まじい回転力を乗せた鋭い突きを繰り出してみせた。