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ディラック

 ──二日後。

 俺たちはパーティー全員で訓練場へと向かっていた。


「そんで? 俺らの腕試しがしたいっつってんのか。そいつはよ」

「うん。まぁ、当然っちゃ当然だけど、ただの足手まといは連れていきたくないって言ってるみたいでさ、とりあえず戦ってみて、その結果で同行していいか決めるんだって。だよな?」


 それを話してくれたテレサへ、同意を求めるように声を掛ける。


「ええ。その方──ディラックさんは元々流れの傭兵だったこともあり、他の方々よりも能力主義の傾向が強いものでして、そのような条件が挙げられました。事後承諾のような形になってしまって、すいません」


 頭を下げて謝罪の言葉を口にするテレサだが、彼女の首に腕を回したアンネローゼは「なんで謝るの?」とその横顔を覗き込みながら言う。


「テレサンのおかげで強い人と模擬戦できるんでしょ? だったら、ありがとうだよー!」


 朗らかにそう言ってみせ、アンネローゼは彼女の頬に自分の頬を擦りつけ、行動で感謝を示しているようだった。


「ははっ。相変わらずだね、アンは」

『ふふっ。アンちゃんのそういうなんでも前向きに考えるところ、私は好きだよ』


 そんな光景を、ミリオとクレアは微笑ましげに見詰めている。


「かっ。その馬鹿と意見が被んのはしゃくだが、実際ありがてぇ話だぜ、こいつはよ。強ぇやつとやり合える機会なんざ、そうはねぇからな。てめぇらと組んでると、こっちも退屈しなくて助かるってもんだ」


 上機嫌そうに歯を打ちならし、ガルムリードは獰猛な笑みを浮かべ、拳を握り締めてみせた。


「やる気満々だな、ガルム。んで、アンちゃん。そろそろテレサのこと放してあげた方がいいんじゃない? 足下ふらっふらっになってるからさ」


 さっきまでは二人で楽しげにきゃっきゃっとしていたが、アンネローゼの激しいスキンシップに体力がもたなかったのか、テレサは今にも崩れ落ちそうになっている。


「ありゃりゃ。ごめんね、テレサン。大丈夫~?」

「あ、あはは。大丈夫ですよ、はい。大丈夫、です」


 少し顔色が悪く見えるが、しっかり受け答えが出来ているようだし、そこまで重症ではないだろうと当たりをつけ、多少気を配りつつもそのまま歩を進め、広場の入り口までやってきた。


「さぁて、そんじゃあご対面といくかよ! どんなもんなんだぁ、中級冒険者最強の実力者ってやつは!」


 ガルムリードが言うように、これから会う冒険者──ディラックという人は、中級でたった一人パーティーを組んでいない人物であり、その実力だけならばとっくに上級へ上がっていてもおかしくないレベルへと到達している者。

 ──ギフトを持つ、最強の中級冒険者なのだ。

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