相談13
「アスマさん。お待たせしました」
しばらくした後、受付の向こうからテレサが声を掛けると共に手招きをしてきたので、応えるように手を上げ、そちらへと向かう。
「どう? なんか良さそうなの見つかった?」
テレサが手に持つ数枚の紙へ視線を向けつつ、そんな風に期待を込めた言葉を掛けてみると、彼女は微笑んで「ええ」と頷く。
「おお! こんな短時間で見つけるなんて、さすがだな」
「ふふっ。任せてください。なんて」
テレサはおどけるようにそう言って、はにかんでみせた。
こちらもそれに笑顔で応え、「それで、どんな魔物?」と質問する。
「はい。こちらの資料を見てもらえますか?」
そう言って、テレサは机の上に資料を広げると、そこに描かれている魔物を指で示してみせる。
「名称は《スチールアント・ガードナー》、《スチールアント・ソルジャー》です。《アント》系の上位種、《スチールアント》の中でも、それぞれ攻防に特化した変異種であり、非常に強力な個体です」
人間大の蟻のような姿形を取るその魔物には、それぞれ前足に当たる部分に、頑強そうな一対の盾や、鋭利で強靭そうな鎌のように見える部位を備えていて、顎にもそれに匹敵しそうな刃を持っている。
単純に見ても厄介な魔物であることが窺えた。
「スチールアントの特徴としては、やはりその身を覆う強固な外殻でしょう。生半可な攻撃では一切の痛痒を与えることもできず、魔術に対する抵抗力を持っているために、弱い魔術はすべて無効化されてしまいます」
「え、なにそれ? 強すぎない?」
「そうですね。少なくとも下級冒険者が挑むような相手ではありません。変異種に至っては土、風の属性魔石を所有していることもあり、魔術による攻撃も強力ですから」
物理、魔術に対して強力な耐性があって、攻撃面でもそんなに強いとか、反則だろ。
「それ、俺たちじゃ絶対勝てないよな? なんならアンちゃんでもきついぐらいだろ」
「ええ。全員で力を合わせても、スチールアント単体に苦戦を強いられることになるでしょうね。変異種が相手となると、勝てるのかも怪しいところです」
「……いや、じゃあなんでこんな資料見せたんだよ」
少しげんなりとしつつそう言ってみせると、テレサは「ふふっ」と笑い、魔物の資料とは別の紙をこちらに差し出してきた。
「私たちだけでは戦力が足りないというのであれば、確実に勝てる戦力と共に戦えばいいとは思いませんか?」
「は?」
そう言われて、彼女が用意したそれを読んでみると、そこにはこれが記されていた。
──中級冒険者パーティー三組による『エルディア鉱山』探索任務に関する概要が。