相談12
「なるほど。そのために風属性の魔石が必要、というわけですか」
──冒険者ギルドにて。
テレサを前にして、自身の諸事情を話したあと、魔石の情報を提供してもらえないか、という相談をしていた。
「うん、そうなんだよ。それでまぁ、こういうことはテレサに聞くのが一番手っ取り早いんじゃないかと思ってさ」
「そうですね。たしかに、魔物に関していえば当ギルド以上に情報を把握している者も少ないでしょうし、それで正解だと思います」
頷き、それを肯定してみせるテレサ。
「しかし、魔石個体──それも風属性に限定。そのうえで私達のパーティーでも討伐可能な個体となると、かなり条件は厳しくなりそうですね。いえ、アンネローゼさんの戦力を考えれば……。あ、すいませんアスマさん。少し資料の方を確認してきますので、少しの間あちらで待っていてください」
「ん? あぁ。わかった。ごめんな、余計な手間掛けさせちゃって」
「ふふっ。構いませんよ。一時的とはいえ、私達は仲間なんですから、頼るのは当然のことなんです。もちろん私もアスマさんのことは頼りにしているので、なにかの際にはよろしくお願いしますね」
「ははっ。うん。そう言ってもらえると助かるよ。じゃあ、お願いな」
俺の言葉に「はい」とにこやかな笑みで応え、テレサは奥にある扉の向こうへと入っていった。
それを見送り、先ほど彼女に指定された通り、設置されているベンチへと腰を下ろす。
「ふぅ」
一息ついて周囲を見回し、知り合いがいないことを確認すると、なんとはなしに、先ほどのシャーロットとの会話を思い出す。
──というのも、テレサから魔物についての情報を提供してもらう案を出したのが彼女だからだ。
まだその結果がどのようなものになるかは不明だが、たしかにその手の情報ならここの職員であり、仲間でもあるテレサに聞くのがもっとも効率のいい手段であることは間違いないだろう。
でも、仕事の迷惑になりそうだから少し躊躇してたけど、嫌な顔一つせずそれを引き受けてくれたテレサには感謝しかない。
と、そんな風に考えを巡らせてながら、居住まいを正すため身動ぎをした拍子に、腰に差してあるナイフがぶつかり小さく音を立てる。
「……ふ、ふふふっ」
それを意識した途端、先ほどの記憶が蘇り思い出し笑いが漏れ出てしまう。
あの反応は本当に可愛らしくて面白かった。
──別れ際にナイフを返してもらった時、なんのためにそれが必要だったのかを尋ねたところ、彼女は少し頬を赤く染めて視線を逸らし、「魔石の属性について上手く説明が伝わるか分からなかったから、もしもの時は魔刃でも発動させて、その違いを実演してみせようと思った」と言ったのだ。
自信に満ち溢れている彼女がふと見せたそんな姿は、普段とのギャップと相まって非常に愛らしく、面白おかしかった。
あまり笑っては失礼だとは思いつつも、何ともいえないこの気持ちを抑えることは難しく、周りににやついていることがバレないよう、両手で口元を覆いながらテレサの帰りを待つ。