相談11
「理解ができたのならいい。では、ここで問題だ。属性相性の悪い者でさえ発動できる魔道具を、相性の良い者が扱えば、その結果はどのようなものになると思う?」
「え? 威力が上がる、とか?」
「ふっ。そのようなぬるい表現では足りんな。答えは、効果が数倍以上に跳ね上がる、だ」
「は?」
数倍って、なんでそんなことに……いや、そうか!
「その顔は、気づいたか」
「あ、うん。あれだ。無属性っていうのが魔力の上澄みたいなものだとしたら、属性を変換されたとしても総量は大したものにはならない。けど、魔石と使用者の属性が同一なら、魔力と属性、その両方が増幅されるから効果も数倍以上になる、ってことで合ってる?」
俺の推測を聞いたシャーロットは、にやりと笑い「正解だ」と答える。
「それで分かっただろう。いかに魔道具の素材となる魔石の属性が大事なのか、ということが」
「うん。たしかに、これは知らなかったらあとでめちゃくちゃ後悔しただろうから、教えてもらえて助かったよ」
「うむ。存分に感謝するといい」
得意気な顔をするシャーロットを崇めるように手を合わせ、感謝の意を示す。
「じゃあ、俺とクレア。両方と相性の良い魔石を見つけてくればいいってわけか。あ、属性も合わせた方がいいのかな?」
「好みにもよるが。まぁ、お揃いでいいんじゃないか」
「そっか」
なら、俺の適性が水と風、回復と補助で、クレアの適性が…………。
「あっ。そういえば、俺クレアの魔術適性知らないや」
今までクレアとその手の話をしたことがなかったから、完全に失念していた。
指輪を渡すまで極力隠しておきたい身としては、勘づかれるようなことは避けたいから直接聞くわけにもいかないしなぁ。
「二人に共通している属性なら、風だ」
「お?」
と、俺がどうするか悩んでいると、シャーロットがすっとその答えを教えてくれる。
「知ってるんだ、先生」
「当たり前だろう。クレアちゃんと過ごした期間は、貴様よりもこちらの方がずっと長いんだ。その程度の情報は知っているとも」
勝ち誇るように言うシャーロットに、微妙な敗北感を味わわされつつも、情報提供には感謝しているので、下手に突っかかることはせず苦笑いを返すだけで済ましておく。
「えっと。それじゃあ、風属性の魔石を用意するとして、その魔石を持ってる魔物がどこにいるのかっていうのは、さすがにそれは先生も知らないよな?」
「知らん。直近で必要がない情報は集めても意味がないからな」
「だよなぁ。うーん、そういうことに詳しい人とかに心当たりとか、あったりは?」
「それならば、あるな」
念のために聞いてみただけにあまり期待はしていなかったが、思いの外あっさりと道が拓けたことに驚きながらも、シャーロットに「誰!?」と尋ねると、彼女はこちらを指差し──
「誰もなにも。いるだろう、貴様の仲間に。その筋の情報を専門に扱っている者が」
そう言ってみせた。