相談8
「さて。では、話を進めるとしよう。次は触媒として魔石を活用する場合についてだ」
「触媒」
「うむ。触媒とは、魔晶石へと加工した魔石に特別な方向性を与えず、魔力を増幅させるという作用のみを生かし、消費魔力を抑え、魔術の威力向上を図ることを目的として使用される際の名称だ」
触媒の意味はなんとなく分かっていたが、魔晶石のことをそう呼ぶっていうのは知らなかったな。
「主に魔術師が己の力を高めるために装備しているもので、木製の杖や装飾品に組み込まれていることが多い」
「だろうな」
まぁ、効果を考えると魔術師がそれを持つのは当然だろう。
持ってるだけで魔術を強化できるし、損をすることもないしな。
「でも、なんで木製? 金属製じゃ駄目なの?」
「駄目ではないが、金属製より木製の方が魔力との親和性が高く、後者の方が圧倒的に魔術を扱いやすいからな」
「へぇ」
魔力量が大きくなるほど魔術を抑え込むのが難しくなるし、その辺の差が大事ってことか。
「もちろん、魔力の通りがいい金属もあるが、手に入りづらいうえに値が張るという欠点がある。それに、金属製の物は重いからな。魔力が尽きた状態で持ち運ぶことを考えると、軽い木製の方がいいだろう」
「あー、なるほど」
たしかに、魔力がなくなった時ってめちゃくちゃしんどいもんな。
魔術師の攻撃は魔術が主体なわけだし、杖は護身のために使えればいいって考えるとそれで十分か。
「分かったのなら、触媒についてはここまでだ」
話を区切るように、シャーロットはそう言ってみせる。
「そして、次に話すものが魔石の主な用途、その最後になる。はっきりと言ってアレは好かんのだが、最も危険であるが故に覚えておいた方がいいだろう」
真剣味の増した瞳でこちらをまっすぐに見詰め、彼女は口を開く。
「その名称を『魔弾』という」
……魔弾。
たしか、前にドンガルさんが言ってたやつだよな。
「……えーと。なんだったか、魔術を封じ込めた魔石のことだっけ?」
「なんだ、知っているのか?」
「あーいや。前にちょっと聞いたことがあるってぐらいで、細かいことは知らないんだけど」
「そうか。だが、それで正解だ」
シャーロットはそれを肯定するように頷いてみせ、続ける。
「魔弾とは。魔晶石とは別の加工方法で造り上げられたもので、その内部に魔術を封じ込め、限界まで魔力を注ぎ込むことにより、一度限りで誰にでも超威力の魔術を発動可能にした、最低最悪の兵器だよ」