相談7
『宿す』と『放つ』。
彼女の言った、それらがなにを意味しているのかを少し考え、その推察を口にしてみる。
「えっと。『宿す』っていうのは、付与魔術のことで。『放つ』っていうのは、《フラッシュ》みたいな射出系魔術のこと、で合ってる?」
「うむ」
「なら、魔術武器と魔道具の違いは、どっちの系統の魔術を発動できるかってことだけなわけ?」
「あぁ。もちろん例外もあるが、基本的にはそうだ」
えぇ?
本当にそれだけなのかよ。
「では、なぜそれらを分けているのかといえば。魔力効率と、魔晶石の強度、この二点が関わってくることになる」
指を二本立ててみせ、シャーロットは続ける。
「まずは、魔力効率の点について。以前に少し解説したと思うが、魔晶石に魔術文字を刻み、魔力を流すことで半自動的に魔術を発動させる形へ加工したものが、魔具──魔道具というものだ」
聞き覚えのある単語からその時の記憶が呼び起こされ、彼女の言葉に同意するように頷く。
「その魔具に刻む魔術文字なのだが、魔石の大きさにより刻み込める数に限りがある。そのうえ、文字が増えるほどに消費魔力が膨大になっていき、それ自体に掛かる負荷も増すことになる。逆に、造りが単純であればそれだけ魔力消費を抑えられ、負荷も少なくて済むというわけだ」
「あー、そういうことか」
魔石に刻み込む文字数が少なく済ませられれば、それだけ使用回数を増やすことができて、安易に使うことができるようになる。
つまり、魔道具から武器に付与魔術を掛けるよりも、武器自体で付与魔術を発動させた方が効率がいいということだ。
「次に、魔晶石の強度について。魔石を加工することよって出来上がった物が魔晶石だが、これは魔石に比べると強度面において著しく劣化する。まぁ、とはいえ、多少の衝撃でどうこうなる程度ではなく、それなりの一撃を受けない限り破壊されるということはない」
「ほう」
「なので、魔晶石を武器に組み込む場合は、直接攻撃を受けることのないよう、その内部に隠されていることが多いな」
「はぁ~、なるほどな」
たしかに、射出系魔術なら魔晶石が露出してないといけないけど、付与魔術なら内側に仕込んでても効果を発揮できるもんな。
そういうところも含めて、本当によく考えられてるなと思う。
「あ。でも、前に使った魔剣は付与じゃなくて、火の魔術を飛ばすやつだったんだけど、あれはなんでなの?」
「さてな。それは製作者にしか分からないことだ。が、なにか意図があってのことなのだろうよ」
「まぁ、それはそうか」
シャーロットが造ったわけでもないんだから、そんなこと分かるわけもないよな。
製作者といえば、あの魔族の男だろうから直接聞けるわけもないし、これはもう謎のままかな。