相談6
「分かりやすいところからいくと、やはり魔武器だな。魔刃武器と魔術武器、その二種を総称してそう呼ばれているものだが、実際のところは似て非なるものだ」
そう言った後、「その違いが分かるか?」とシャーロットが問い掛けてきたので、少し考えてそれを口にしてみる。
「えっと。魔刃武器は魔力を込めることで魔刃を発生させる武器で、魔術武器は魔力を込めることで魔術を発生させる武器。だよな」
「うむ、その通りだ。が、それでは半分正解といったところだな」
「半分、か。じゃあ、もう半分の違いは?」
俺の問いを受けたシャーロットは、「ふっ」と小さく笑ってみせると、こちらへナイフを寄越すように言ってきたので、腰に差していたそれを手渡す。
「それは性能面ではなく、作製面での話だ。魔刃武器は作製段階で刀身を形作っている鉱石に魔石を馴染ませ、鍛えると同時に結合作業を行い、微細で丁寧な業を駆使することでようやく完成させることのできる、職人の腕を問われる武器であり、ある意味芸術作品と言っても過言ではない」
ナイフの表面を指で撫でながら、シャーロットは心の底から褒めるようにそう言ってみせる。
「だがそれだけに、斬れ味が刀身の変化によって大きく左右されるため、欠けや歪みが発生してしまえば瞬時に性能が著しく低下してしまう。なので、衝撃などで変化の起きにくい、一部の希少鉱石を用いらなければ実用性に乏しいところが難点だがな」
「ほう」
それはまた、とんでもなく値の張りそうな代物だな。
たしか、造るのにも一年ぐらい時間が掛かるとか聞いたことがあるし。
でも、その分誰にでも魔刃が使えるっていうのは、かなりデカイよなぁ。
「次に魔術武器だが。こちらは魔刃武器とは違い、それほど職人の腕による差の影響を受けることはない。なぜなら、武器に魔晶石を組み込めば、それだけで魔術武器なりえるからだ」
ナイフの刀身を指でコツコツと鳴らしながら、シャーロットは言う。
「え? それって、魔道具とはどう違うの?」
はっきり言って、まったく違いが分からない。
「本質的に言えば、魔術武器と魔道具は同じものだ。魔晶石をどのような形で組み込んでいるか、という程度の違いしかない」
だよな。と思うと同時に、じゃあ武器に組み込む必要があるか、と考えてみるが答えはでない。
「ふっ。ではなぜ武器に組み込んでいるのか分からない、という顔をしているな」
「うっ……。俺、そんな分かりやすい顔してる?」
「あぁ。これほど感情の読み取りやすい者もそうはいない、というぐらいにはな」
……そんなにか。
自分の顔を触って表情の変化を確かめてみようとするが、当然分かるわけもなく、諦めのため息をつく。
「まぁ、いいや。それで、どういう理由があってそうしてるんだ?」
「ふふっ。なに、簡単な話だ。要は『宿す』か、『放つ』。その点が違うというだけの話だ」