相談4
そういった知識を披露してくれるのはこちらとしてもありがたいし、何よりかなり興味深いので、居住まいを正して真っ直ぐに彼女の顔を捉える。
「まず最初に断っておくが、これはあくまでも基礎的な知識に加え、我の個人的な研究結果を元に出した結論であり、これから話すことすべてが正しいわけではない、ということを念頭に聞くことだ。質問があるならその場で答える。なんでも聞いてくるがいい」
魔石というものはそれほど奥が深く、謎の多いものだということなのだろう、彼女の言葉に一つ頷いてみせ、同意を示す。
「魔石──それは上位の魔物、その体内において生成される魔力の貯蔵・増幅器官であり、取り込んだ魔素を瞬時に魔力へと変換する変換器でもある」
「貯蔵と増幅と変換、って。なんかすごいな。というか、瞬時に変換できるなら、魔物は無制限に魔術を使えるってこと?」
もしそうだとしたら、魔術主体で戦うような魔物に囲まれたら逃げれなくない?
「いや、その場の魔素濃度にもよるが、瞬時に取り込める魔素量に制限がある以上、無限に魔術を行使し続けるということは不可能だ。だが、人のそれと比べればはるかに優れているのは言うまでもないだろう」
たしかに、人が魔力を回復させようとすれば、安静にしていても大体丸一日ぐらいは掛かるし、魔力量が多ければ多いほどそれは顕著になるはずだ。
「ただし、魔物は体内に魔素を溜め込むための臓器を有し、その血肉に至るまですべてに魔素が含まれているため、それを活用することによっても回復は可能となるので、それを消費し切るまでは制限がないと言ってもいいかもしれんがな」
「うへぇ」
そういえば前に魔物は魔素を溜め込んでるから食べれないって話を誰かとしたような気がするな。
……リリアだったっけ?
「あ、でもさ。魔石自体が魔力を作り出すんだったら、間隔を空ければ魔力の消費なしで魔道具を使えるってこと?」
「ふむ。良い着眼点をしている。だが、残念なことにそれはできない」
「え? 無理なの?」
「あぁ、無理だ。先程言った通り、魔石は魔物の器官だからな。主が死んだ時点でその機能は失われてしまうのだ。その他機能についても、時の経過、及び使用するほどにそれは劣化していく」
そうなのか。
まぁ、それを差し引いても十分以上に役に立つうえに、年単位で使用し続けることができるらしいから、大金を掛ける価値はあるんだろうけど、惜しいな。