下水道14
肉を斬り裂くたびに嫌な感触と共に、耳にこびりつくような悲鳴が上がり、命が一つ、また一つと消えていく。
先程倒すことのできなかったネズミも、この混乱の中ではその敏捷性を活かすことができず、他と同様にあっさりと両断していく。
集団から逸れ、万全の状態でこちらを躱そうとしてくるネズミもいたが、そういったものには地を払うように剣を振ることで一度宙へと跳躍させ、持ち味を殺したところで一撃を叩き込んでやれば、それで事足りた。
結局、どれだけ俊敏であろうと足場がなければそれを発揮することはできないため、避けるための手段を奪ってやればただの小柄な的でしかなく、容易に倒すことが可能というわけだ。
「これで、終わりだ!」
そうして、数えるのも嫌になるほどの魔物、その最後の一体を討伐し終え、なんとかその波を乗り越えることができたので、安堵のため息が漏れる。
「はぁっ。あー、疲れたぁ」
妙に気だるい体を引きずるように壁際まで運び、その場に座り込む。
よくよく考えてみれば、前回とは違って今回は《限定解除》を使うことなく《起死回生》を強制的に発動させたから、《闘気》のデメリットをもろに受けてしまい、体力がかなり削られてしまったからこそ、これだけの疲労感があるんだろう。
その辺りも計算に入れておかないといけないっていうのは、思ってたよりもかなり面倒なスキルだな、《強制発動》。
『……お疲れさま……アスマ君』
「ん? あぁ、クレア。ありがとう」
こちらを労うように声を掛けてきたクレアは、額から滴るように流れ出てくる汗を手ぬぐいで拭き取ってくれる。
「悪いな、そっちも疲れてるのに」
『……ううん……私はアンちゃんの邪魔にならないように後ろで動いてただけだから……全然疲れてないよ』
その言葉どおり、クレアはとくに疲れた様子は見せておらず、にっこりと笑ってみせた。
まぁ、実際こちらから見てた限りでも、クレアはアンネローゼの一撃で絶命していなかった個体に止めを刺して回っていただけだったので、肉体的にはそれほど疲労していないというのは分かる。
「でも、こうしてここに魔物を集める作戦を考えたのはクレアなんだろ? 頭脳労働で頭の方は結構疲れてるんじゃないか?」
『……うーん……そうでもないよ……私はお兄ちゃんがやってたことをただ応用しただけだから』
そう簡単に言ってみせたクレアは、本当に大したことはしていないという風に首を振り、照れくさそうな表情を浮かべた。




