下水道13
そして、現場へと辿り着いたところで、彼の言っていたことの意味が明らかとなった。
壁面に開けられた穴から大量に溢れ出す魔物の群れ。
スパイダーを先頭に、スカベンジャー、それに続いてネズミが我先にと押し合いへし合い、際限なく姿を現している。
だが、魔物たちはある一定の地点まで足を進めたところで、その進行を物理的に止められることになる。
心底楽しそうな声を上げ、縦横無尽に槍を操るアンネローゼによって。
「あっはははは! どんどん出てくる~、すごいすご~い!」
彼女が無邪気に槍を振るう度、刺し貫かれ、斬り裂かれ、打ちのめされる魔物たち。
その殲滅速度は異常なまでに速く、相手がアンネローゼの間合いに入った瞬間、血飛沫を上げ、崩れ落ちてしまうほどだ。
その様は、まさに独壇場といっても過言ではないだろう。
「てんめぇ。一人で楽しんでんじゃねぇぞ、こらぁ!」
勢いをそのままに、ガルムリードはその場から跳躍すると、大きく振りかぶった拳を魔物の群れの中心へと叩きつけた。
躱わすこともできず、直撃を受けた魔物はその身をひしゃげさせ、多量の体液が辺りへ飛び散る。
「あ! ガルルンきたー!」
「おうよ。当然だろうが! てめぇらの考えなんざ、とっくに読めてんだよ!」
ぱっと笑みを浮かべてはしゃぐアンネローゼに、吼えるようにして返すガルムリード。
それをよそに、攻撃の余波を受けたことにより魔物の進行方向が二つに別れてしまい、その一方がこちらへと流れてきた。
「え、ちょっ!?」
それは到底俺一人で捌ききれる量ではなく、かといってそれをやり過ごせるような場所もなく、咄嗟の判断でこの場を乗り切るためのスキルを発動させる。
『アクティブスキル《強制発動》起動──パッシブスキル《起死回生》限定発動』
戦姫との戦闘を経験することで手にしたスキル《強制発動》。
これは、条件を満たすことでしか発動できないスキルでも無理やりに使用することのできるといったものだが、一度効果を発揮させてしまうと半日はそのスキルが完全に発動しなくなってしまうので、ある意味では《限定解除》以上に使いどころが難しいスキルだ。
「おおおぉっ!」
そうして爆発的に飛躍した力を用いて、目前まで迫っていた魔物の群れを高速で斬り伏せていく。
「かっ。なんだ、お前もやる気じゃねぇかよ!」
「お前、これわざとだろ! むちゃくちゃしてんなよ!」
恐らくはこれ以上アンネローゼに優位性を取られないようにやったんだろうが、さすがにやりすぎだ。
「文句ならあとで聞いてやらぁ。おら、やんぞ!」
「もうやってるっての!」
不満を言葉に込めて吐き出し、一瞬だけガルムリードを睨みつけると、目の前にいる敵を掃討するために全力で剣を振るっていく。




