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下水道12

 その最中、突如として前方から眩い光の波が押し寄せ、周囲の闇が呑み込まれてしまう。


「うわっ!?」

「ちっ!」


 強化していた目でそれをもろに捉えてしまったことにより、視界が焼かれてしまったかのように白で埋め尽くされ、目の奥に鋭い痛みが走る。

 視覚を奪われ、その場で立ち竦むのは悪手だと思い、壁際を背にして顔を守るように両腕を交差させる。


「ガルム! 無事か!」

「うるせぇ! 策敵してんだろぉが!」


 光に晒された直後、即策敵に意識を集中させていたのだろう、大声を掛けたことを怒られてしまうが、凹んでいる場合ではないと、こちらもそれに倣って意識を策敵状態へと移す。

 ……こちらへ向かってくる音はなく、近くに物音もない。


「っ?」


 そう思っていた直後だった。

 響き渡ってきたのは、とてつもない数の慌ただしい足音。

 判別は難しいがそれは人のものではなく、それよりも小さな、恐らくはネズミやスカベンジャーのものだろう。

 それが一斉に、奥の区画へとなだれ込んでいっているようだ。


「かっ。かっはっはっは! そぉいうことかよ。あぁ、やってくれんじゃねぇか。ちび助!」

「え? なに、クレアがどうかしたのか?」


 突然笑い出したかと思ったら、何かに納得したかのような声を上げるガルムリード。

 それが何を意味しているのかが気に掛かり、疑問を唱えつつ、ゆっくり目を開いていくと、視線の先にいた彼がニヤリと笑い、「行くぞ」とばかりに手招いてみせ、走り出した。


「お、おい!」


 未だ霞む視界を、視覚強化で無理やりに正常な状態へともっていき、後を追う。


「俺たちぁ嵌められたんだよ、あのちび助にな」

「は? どういう意味だよ」


 追いついたところで、そんな風に言ってみせたガルムリードに更に問い掛けると、彼は「かっ!」と笑い、口を開く。


「あいつらは、俺たちと別れてから一度も戦ってなかった。戦闘音が一切聴こえてこなかったからなぁ」

「え? あー、もしかして、ずっと向こうの動向探りながら策敵したり、戦ったりしてたのか?」

「おう。当然だろぉが」


 いや、なにが当然なのか分からんけど、ずいぶん器用なことしてるな。

 ……というか、さっきネズミを倒し損ねたのって、それが原因なんじゃ?


「で、だ。俺ぁ、あいつらが敵を見つけらんねぇから戦闘をしてないもんだと思ってた。が、それは間違いだ。あいつら……いや、あのちび助は、わざと動きやがらなかった」

「なんで?」

「かっ! その答えはちび助に聞きやがれ。早く行かねぇと、この先はあいつの独壇場になってやがるからなぁ!」


 そう言うと、ガルムリードは姿勢を低くして、急加速で先を目指し始めた。

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