下水道11
そうして、これまで相手にしていたやつらとは毛色の違う魔物に調子を狂わされた結果、あれだけの数をすべて逃してしまうことになってしまった。
「そう考えると、やっぱりテレサさんの魔術ってすごかったんだな。弱体化してるのとは完全に別物だよ、あれ」
支援ありで戦っていた時と今の戦闘を比べ、前者の方が圧倒的に楽だったことを思い、その効果のほどを改めて実感する。
「にしても、一体も仕留めらんねぇってのは情けなさすぎだろぉよ」
苛立ちを露に、ガルムリードは歯を鳴らして拳を握り締める。
「ちっ。あいつならこんな無様は絶対に晒さねぇぞ、くそがっ!」
そう言って壁を殴りつけると、それに反応して向こう側で何かが動く音が微かに聞こえてきた。
たしかにアンネローゼだったらその場にいたネズミを全部一人で片づけられた可能性はある。
それぐらい彼女の動きは俊敏で、槍の冴えも常人離れしているからだ。
「まぁ、逃しちゃったものはしょうがないだろ。切り替えて次に行こうぜ。今は勝負に勝つのが先決なんだし」
「……かっ。分かってるつーの。今ので動きは把握した。次見かけた時はこうはいかねぇ」
「だな。あの速さは厄介だけど、それだけならどうとでもなるし」
不規則な動きと敏捷性に対応するのが難しいのなら、それを発揮できない状態に追い込んでやればいいだけのことだ。
あれが攻撃的な魔物だったならまた変わってくるが、基本的逃げに徹するのであれば対処はしやすい。
「あ、そういえば。さっき噛まれたところ大丈夫か? 血が出てたみたいだけど」
「こんくらい大したことねぇよ。放っておきゃ勝手に治る。それより、お前こそ耳は平気かよ」
なんの合図もなしに咆哮を使ったことを気にしてか、ガルムリードがこちらを気遣うようにそんなことを言ってくる。
「あぁ、問題ない。咄嗟にだけど一応耳は塞いでおいたから、ちょっとクラっときたぐらいだし、気にしなくていいよ」
耳を閉じても反響が凄まじくてノーダメージとはいかなかったが、行動に支障が出るほどではないので、実質無傷みたいなものだ。
「そうか。ならいい」
ぶっきらぼうにそれだけ言って、こちらに背を向けるガルムリード。
その仕草が変に可愛らしく見え、笑ってしまいそうになるが、下手に刺激して怒られるのも嫌なので堪えておく。
そして、その後も何度か策敵からの戦闘をこなしていると、再度ネズミの反応を感知し、俺たちはその場へと向かっていった。




