下水道10
「えっと。とりあえず、ここにいるやつらはこれで全部かな?」
「おう。潜んでるやつは別として、手を出せる範囲のは終わりだ。次行くぞ」
「了解」
策敵を済ませたあと、俺たちは角待ちをしていたスパイダーや、移動先の区画にいたスカベンジャーなど、計十体ほどを倒していた。
さすがに二人だとすべてに対応することができずに、何体かには逃げられてしまったが、結果としてはまずまずだろう。
「あ、ガルム。それ、俺が持つから」
そう言って手を差し出し、ガルムリードが持っていた分の死体袋を預かる。
「あ? そんな荷物持った状態で満足に戦えんのかよ?」
「いや、まぁ片手は空いてるし、そこまで重くもないから大丈夫だと思う。いざとなったらぶん投げるしさ。それに、この勝負は一応ガルムとアンちゃんのものだから、あんまり俺が戦闘に参加しすぎるのもよくないだろ」
戦闘で手を抜くつもりはないし、策敵もしっかりと行うが、あくまでも俺は彼の手伝いのようなものだ。
なので、積極的に前に出るつもりはないし、リスクを冒してまで全力を出すつもりもない。
「かっ。あぁ、その通りだ」
ガルムリードは楽しそうな笑みを浮かべると、「ついてこい」とばかりにこちらへ手招きをして、移動を開始する。
そして、次の区画へと近づいたところで、一度足を止めてしっかりと策敵を行い、魔物の大まかな位置と数を把握し、彼の合図で一気に区画内へと足を踏み入れた。
その先にいたのは、予測通りネズミの群れだ。
物音でこちらの接近は気づかれていたのか、目視でそれを捉えた時には様々な方向へと逃げ出していたが、構わずに距離を詰めていくと、ガルムリードは混乱している相手に拳を振り下ろす。
「おぉぉらっ!」
倒れ込むような勢いで放たれた拳は、逃げ惑っているネズミを容赦なく叩き潰した──かに見えた。
「ちっ!」
だが、拳を引いたあとには何も残っておらず、それが不発に終わったことを現していた。
それを目端で確認している間に、こちらに向かってきていた複数のネズミに対応するため、魔術の準備をし、それを放つ。
「《ウィンド》!」
手のひらから放たれた風魔術は、狙い通り地面に直撃し、周囲にいたネズミたちの姿勢を崩す。
その中で一番近くにいた獲物の下へ一足飛びで接近し、速さを意識して剣を振るう。
「しっ!」
その一撃は寸前で惜しくも避けられてしまうが、元より追い詰めることを前提としたものだったために、そこから二撃目へと繋げ、さらに姿勢を崩してやろうと画策する。
が、二撃目、三撃目と躱わすごとに、むしろ体勢を立て直していったネズミは、一転してこちらへ接近してくると、脇をすり抜けるようにして走り去っていってしまった。
「あ、あれ?」
反撃があるかと思って身構えていただけに、一目散に逃げ出していくその姿に面を食らい、そのままそれを見送ってしまう。




