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下水道4

「よし。次はネズミを倒しに行こうか」


 スカベンジャーの群れを片づけた後、その死体を袋詰めにし、入り口付近の区画に運ぶという作業を数回繰り返したところで、ミリオからそんな提案がでる。


「あぁ、いいんじゃないか。ネズミはまだ一体も倒してないし」

『……うん……でもさっきから一度も見かけてないけど……どこにいるのか分かるの?』


 たしかに、そう言われてみればネズミやスライムは、まだここに来てから一度もその姿を見ていない気がする。

 まぁ、スライムは見つからなかったところで大した問題もなさそうではあるけど、ネズミは確実に駆除しておかないとだし、その居場所が分かるのであればかなり助かる。


「うん。ネズミってね、すごく臆病な魔物なんだよ。だから、事前に戦闘音を響かせる場所を選んでおけば、ある程度は隠れ先を誘導することができるんだ」

「そういうことですか。なるほどです」


 と、ミリオの説明を聞いたテレサさんは、感心するようにそう言って、顔の横で手を合わせてみせた。


『……そっか……だからずっと端の区画で戦ってたんだね』

「え? あ、あー。そういうことか。すごいな、ミリオ」


 クレアの発言でその意味にようやく気づき、それと同時にミリオがそこまで考えて動いていたことに驚く。


「ははっ。ありがとう。それじゃあ、行くよ」


 その言葉に従って再度列を組み、ネズミが集まっているであろう区画を目指し、俺たちは歩を進める。





「《グランフィアー》!」


 テレサさんの魔術が発動し、区画内にいた大量のネズミに弱体効果が付与される。

 そこへ、間髪を容れずに飛び出し、武器を振るっていく。


「っら!」


 固まっていたネズミを、数体まとめて薙ぎ払う。

 血飛沫が舞い、血臭が漂い、床は肉片と血溜まりで汚れ、空間そのものが侵されていくような錯覚に襲われる。

 それを意識するたびに少しずつ気分が悪くなっていくが、その感覚を無理やり抑え込みながら、何度も何度も剣で斬りつけ、足で踏み潰していく。

 そうして、その場にいたすべてのネズミを片づけ終えた頃には、その感覚も麻痺し、妙な達成感だけが心の中に芽生えていた。

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