好調3
『……え……シャロちゃん勝てるの?』
自信満々に言い切ったシャーロットに驚いたクレアがそう尋ねると、彼女はにやりと笑い、腕組みをして「うむ」と答えた。
「もちろん状況にもよるが、たとえ相手がどれほどの武の達人であろうとも、近接戦にさえ持ち込まれなければ我に敗北はない。決してな」
それがただの口先だけの言葉なのか、本当にそれが可能なのかは分からない
。
だが、その口調や表情などから滲み出している自信は、到底虚言からくるそれとはほど遠く、真実味を帯びていた。
『……やっぱりすごいね……シャロちゃんは』
「ふふ~ん」
クレアからの言葉にご満悦の表情をみせたシャーロットは、ミリオの方へと顔を向けると、「それで?」と言ってみせる。
「どういう意図を以てこんな質問をしたんだ、貴様は?」
「別に大した理由なんてないよ。ただ、師事を受けるのなら、シャーロットのことをある程度は知っておきたいなって思っただけだよ」
「それだけか?」
どんな答えを期待していたのか、シャーロットが拍子抜けしたようにそう言うと、ミリオは「うん」とだけ答え頷いてみせた。
「……まぁ、いいだろう。ともかくだ。どのような状況であろうとも、魔術やそれに付随した技術が必要になってくる場面は確実に訪れる。その時に後悔をしないよう、今は各自その腕を磨き続けるがいい」
と、シャーロットが場を締めくくるように言い、各々がそれに答えたところで解散の流れとなり、店をあとにする。
「んーっ!」
夜風を浴びながら、体を解すように伸びをすると、関節が小気味良い音を鳴らす。
「いやー、今日も疲れたな」
『……ふふ……お疲れさま……アスマ君』
「おう、クレアもお疲れ。しっかし、ミリオはさすがだな。あっさりと魔術を二つ同時に発動できるようになるなんてさ」
先程の光景を思い出し、口につくままにその時の感想をミリオへ伝えると、彼は口元を綻ばせ首を横に振ってみせた。
「ただ発動できるようになっただけで、そんなに大したことはないよ。さっきも言ったけど、まだ実戦で使えるようなものじゃないから、もっと精度を高めていかないと」
立ち止まったミリオは手のひらを上に向け、そこに水球を生み出すと、更にそこへ電撃を纏わせてみせた。
だが、それは数秒と持たず、爆ぜるようにして飛び散り地面の染みとなってしまう。
「こんな風に違う属性と組み合わせようとすると、更に難易度は増すし、まだまだ先は長そうだ」
そう言ってみせたミリオは、でもどこか楽しそうな表情を浮かべていた。
そんな彼の肩に手を置いて、「一緒に頑張っていこうぜ」と言い笑い掛けると、ミリオも笑顔で応え、「うん」と頷いてみせる。
「あ、そういえば。明日のことで二人に言い忘れていたことがあるんだけど、ちょっといいかな?」
家の近くまで来たところで、なにかを思い出したようにミリオが声を上げた。
「ん? あぁ、なに?」
「うん、実は──」




