好調
「不利な状況では退くことも重要ですが、先程のような場面ではまず体勢を立て直すことを優先しましょう。その際、焦りは禁物です。急いてしまえばそれだけ隙が生まれ、相手がつけ入りやすくなってしまいますからね」
「はい」
「どのような者にも得手不得手はあります。なので、危機的状況でも平常心を失うことなく、場を変化させる手立てを模索し続けてください。状況が好転すればそれだけ味方も補助をしやすくなりますので」
「了解っす」
戦闘後。
いつも通り、ゲインさんとの反省会が始まっていた。
こうして自分の悪かった部分や、どういった方向性でそれを修正していけばいいのかを逐一教えてもらえるのは、本当にありがたい。
「ですが、そこへ転じるまでの動きはとても良かったですよ。素早い初撃に、回避からの反撃、受け身からの足絡め。武器のみに依存せず、しっかりと肉体も活用ができていました」
「ありがとうございます。これも全部ゲインさんが色々と教えてくれたおかげなんで、本当に感謝してますよ」
「アスマ君は素直なので、教える身としてついつい熱が入りすぎてしまうこともありましたが、そう言ってもらえてなによりです」
にこやかな笑みを浮かべるゲインさんに、こちらも笑みで返す。
たしかに、この人はたまに異常なまでに追い込みを掛けてくる時もあるけど、それもある意味でいい訓練にはなってるし、こうして良くできた部分は褒めてくれるので、人として好きだし尊敬できる。その期待に応えたくて頑張れるところもあるし。
「さて。それでは、もう一度始めましょうか。次は今の点に注意したうえで、なるべく長く戦闘を継続できるように頑張ってください」
「うぃっす!」
そうして、その後も引き続き戦闘訓練をこなしていくこととなった。
そして、夜。
シャーロットの店にて、俺とクレア、それにミリオも加わって三人で彼女から指導を受けていた。
「……ふむ。なんだ、できるじゃないか」
少し呆れ気味にそう言ったシャーロットの前には、両手上に水球を浮かばせているミリオの姿がある。
店に来て同時に魔術を発動させるためのコツを聞いたあと、少し練習してみた結果がこれだったので俺とクレアもかなりびっくりしている。
「うん。いずれはできるようにならないと駄目だって思っていたから、元々魔力を分けて高める訓練自体はしてたんだ。だからあとは、そのために必要な知識を手に入れたかったんだけど、おかげでとりあえず発動することはできるようになったよ。ありがとう、シャーロット」
「なるほど。伊達に一人で任務をこなし続けていただけのことはある、ということか。やるではないか」
あっさりと難しいことをやってのけたミリオに、シャーロットも小さく拍手を送っている。
いや、さすがというか、すごいなミリオ。




