質問3
やはりというべきか。
どうやらそれが《ギフト》というものを手に入れるために必要な下地ということだ。
それを素直に受け取るのならば、レベルが最低値から上昇することのない俺にはどう足掻いても入手することのできない力なんだろうけど、ここにいる一人の例外がそれを否定している。
「でも、アンネローゼは持ってるんだろ。その《ギフト》ってやつを。レベルが100になってないのにさ」
本人に直接確認したわけではないけど、ニーアさんの口振りからしてそれはまず間違いないはずだ。
ということは、《ギフト》にはそれ以外にもなにかしらの取得条件があって、それを満たせばもしかしたら俺にも……。
「待て待て。聞きてぇことはあるんだろうが、ひとまず先に俺の説明を聞け。一々話の腰折ってたら終わるもんも終わりゃしねぇだろうが。あとでまとめて答えてやっから少し静かにしてろや」
「……あー。まぁ、そうだな。悪い。続けてくれ」
相手のことを考えず、先走って結論を求めにいこうとした自分を恥じて、謝罪をしつつなんとなく視線を横に向けてみると、子供の失敗を見守る親のように、クレアがなんともいえない笑顔をこちらへ向けていた。
……うん。もう余計な口は挟まずに黙ってよう。
「まぁ、そう聞けば大した条件じゃねぇように思うかもしれんが、そいつは間違いってもんだ。お前らの中で一番レベルが高いやつなら、今40ちょいってとこだろ?」
その質問を受けて、この中で一番レベルの高いミリオが一つ頷いてみせる。
「このレベルってやつはよ、その辺りまでは適当にそこらの雑魚を狩ってるだけでも簡単に上がっていくんだが、それが50に到達したところからがある意味で本番だ」
そこで一度間を置くように俺たちの顔を見回したグランツさんは、瞳に真剣味を帯びさせ、その口を開く。
「そこからはギルドの区分における、下位の魔物をどれだけ倒そうが一切レベルが上がることはなくなる。つまりはその上を目指そうとすりゃあ、これまで敬遠していたような上位種って呼ばれている魔物や、それと同等の魔物を相手にしていかなきゃなんねぇってことだ」
それは衝撃の事実だ。
今までに俺が戦ったことがある上位種といえば、ハイオークとブラッドウルフぐらいのものだが、その二種はどちらもがかなり強力な個体で、当時は他人の力を借りたうえで、死にかけになりながらようやく一体倒すことが精一杯だった。
今なら、みんなで力を合わせればあの時よりは遥かに楽に勝てるだろうとは思うが、それは相手が一体だったらの話だ。
あの強さの魔物を複数体同時に相手するとなると、それなり以上の覚悟は必要になってくるだろう。
それぐらいに、上位の魔物というのは厄介で凄まじい力を持っている。
「そこが下級冒険者の最大の壁ってやつだ。レベルを50以降に上げるためには上位の魔物を相手にしなきゃいけねぇ。だが、急にそんはやつらを相手取るのは普通のやつには無理だ。ある程度の才能を持った人材と、それを生かすための頭がいる。それを乗り越えてレベルが70まで到達できたやつは、晴れて中級の仲間入りだ。ま、絶対じゃねぇけどな」
……レベル70。
それはミリオたちの両親が到達していたのがその中級という地位であり、そこが俺たちが旅に出るために最低限必要な戦力の目安だ。
正直、もうある程度は手の届くところまで来たんじゃないかと思っていたが、改めてそう聞かされると、まだまだ俺たちはその足下に到達したにすぎないということを思い知らされる。




