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質問

「さて。話すことも話したところで、そろそろ我々は行くとしよう。レウ、君はいい加減立ち上がれ。みっともないぞ」

「ふぅ。はいはい。分かったわよ、っと」


 話に参加することもなくひたすらに無言を貫き通していたレウナーレさんは、ニーアさんから窘めるようにそう言われ渋々といった様子で立ち上がる。


「まったく、君は本当に──」

「説教ならあとにしてちょうだい。それよりさっさとソニアと合流しましょうよ。本気で気分悪いから、あの子にまた薬もらいたいし」

「……仕方のないやつだな、君は」


 呆れるように言って、ニーアさんはこちらへ向き直ると、場の空気を改めるように一度咳払いをしてみせた。


「では、我々は次の目的地へと出発する。短い時間ではあったが、君たちと過ごした時間は有意義なものだったよ。許されるのであればもう少し試しておきたいこともあったが、まぁそれはいいだろう」


 わずかに未練を感じさせるような物言いではあったが、そこまで重要なことではなかったのか、すぐに気持ちを切り替えるようにそう言ってみせ、その視線をミリオの方へと向ける。


「ミリオだったな。アンネローゼのことは君に任せる。これからも上手く使ってやってくれ。そして、来るべき時に備え共に強くなっておけ」

「はい」


 ミリオの返事を聞いた彼女は「うん」と満足そうに頷いてみせると、踵を返して顔だけをこちらへと向けてくる。


「それでは、ギルドまでは一緒に戻るとしよう。君たちもあの銀狼の少年──ガルムリードの様子が気になっていることだろうし、私もソニアを拾って、グランツ殿に挨拶だけでもしておきたいからな」

「そうですね。では、そこまでは一緒に行かせてもらいます」


 そうして、先行する彼女たちの後を追うように俺たちも歩き出すが、未だに肝心な質問をしていないことを思い出し、少し空気が読めていないことを自覚しながらも勇気を振り絞ってニーアさんに声を掛ける。


「あの、すみませんニーアさん。最後に一つだけ質問してもいいですか?」

「ん? うん、私に答えられることならな。それで、何が聞きたい?」


 唐突に声を掛けたことを気にもせず、気前よくそれに応えてくれるニーアさんへ、それについて尋ねる。


「その、アンネローゼに言ってたと思うんですけど。《ギフト》って、なんですか?」


 それは以前から幾度か耳にはしていたが、これまで誰かに聞いたりはしてこなかった言葉。

 だが、先程ニーアさんは、その《ギフト》というものが戦姫には必要なものなのだと言っていた。

 だからこそ知っておきたい、《ギフト》とはどういうもので、それは俺たちにも得られるものなのかどうか、ということを。


「なんだ、アンネローゼから聞いていないのか?」

「いえ、なにも聞いてないですけど」


 そう言いつつアンネローゼに顔を向けると、彼女はぽかんとした表情で「う?」という声を出す。

 その反応的に、たぶんもう《ギフト》という言葉自体を忘れてるんじゃないかなと思い、再びニーアさんへと視線を戻すと彼女はこちらに頷いてみせた。


「そうか。ならば私が答えよう。《ギフト》とは──」

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