戦姫として5
「まぁでも、それは一年後の話だし、まだしばらくは一緒にいられるから、アンが向こうで寂しさを紛らわせるような思い出を作っておこう。代わりってわけじゃないけど、その時まではアンも僕が強くなれるように協力してね」
「うん! まっかせてー!」
ミリオの提案に再度元気よく答えてみせたアンネローゼは、「えっへへ~」とにやけた笑みを浮かべ、彼の腕にじゃれついている。
それを見ていたニーアさんは、面白がるようにフッと笑ってみせ、それに反応してミリオの視線がそちらへと向けられた。
「いやなに。うまく手懐けたものだな、と思っただけだよ。なるほど、たしかにそれは手っ取り早く強くなるためには最適の手段だろう。やはり君は頭がいいな」
「……そういう考えがまるでないとは言いませんけど、打算を抜きにしてもアンの力になってあげたいと思っているのは本当ですよ。僕がこの子にしてあげられることなんてそれぐらいしかないですから」
「?」
何の話をしているのか分からないとばかりに首を傾げるアンネローゼだが、ミリオが「なんでもないよ」というように笑ってみせると、それだけで納得したのか、頷いた後再びじゃれつき始めた。
「そうか。まぁ、利用できるものはなんでも利用するというのは良いことだ。遠慮することはない。それに、アンネローゼの成長ぶりをみるに、君のやり方はその子にも良い影響を与えているようだしな」
ミリオのことを褒めるようにそう言ってみせるニーアさん。
たしかにミリオは少し腹黒い部分もあるけど、基本的にはこちらのことを考えて強くなれるサポートをしてくれたり、自分たちが戦いやすいような作戦を考えてくれたりと、俺たちのことを思って指示を出してくれるのでそういった評価を受けているところをみると、こちらとしても嬉しいところはある。
「だが、アンネローゼと並び立つことを目標としているのであれば、やはり技術面はもっと磨いていかなければ話にならないだろう。魔術にしてもそうだが、苦手にしている近接戦も人並み以上にはこなせるようにしなければな」
「そうですね。やっぱり、突出したものを持っていない僕の場合、それぐらいは求められて当然でしょう」
「うん。現地において、頭で考えて戦える者は特定の場面では非常に脅威と成り得るが、それを生かす地力がなければただの雑兵と変わらない。だから、君はすべてのことを高水準で行える万能性を身につけろ。そこに立てて、ようやく最低限の資格を得られるといったところだ」
「ええ。そうなれるように努力してみますよ」
そう答えたミリオの口調はあっさりとしたものだったが、その視線は真剣そのもので、彼がどれだけ本気なのかを窺わせるには十分なものだった。




