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投擲

 「ふっ!!」


 指先に集約させた力で押し出した石がゴブリンの首の骨を砕き、その命を刈り取る。

 再三に渡る投石により、これで六体目のゴブリン術師を討伐することに成功した。割とすぐに投石のコツを掴んだおかげで、一体のゴブリンを倒すのに一投で済むようになったのは重畳だ。

 今俺は先程までとは違う木の上で待機している。先程までいた位置から狙えそうな術師はあらかた片付けてしまったので、ゴブリンの頭上越しに木から木へと飛び移って、今はセシリィやミーティアよりも先に行く形になり引き続き、術師の索敵と討伐を優先的にこなしている。

 ゴブリンたちは頭上になどまるで注意を払っていないようで、俺の存在に気づいている様子はまるでない。ある程度知恵の回る魔物ならとっくに気づかれていてもおかしくはないが、これがゴブリンという魔物であり、数の暴力以外に能のない者の致命的欠点なのだろう。三大欲求を満たすことと暴力ぐらいにしか使うことのない脳ならその程度で十分なのかもしれないが。

 と、樹上からゴブリンの群れを見下ろしていると、またしても術師を発見した。

 現状では後手に回るしか方法がないのだとしても、目の前で行われている放火を見てからでしか対応できないというのは相応にストレスが溜まるもので、あまり見ていて気持ちの良いものではないが、夜目の利かない俺にとってはこの炎がほぼ唯一の光源なので完全に消え去ると、ゴブリンの姿があまり見えなくなり困るわけなのだが…。

 それにしても、術師はあと何体いるんだろうか? 直接戦闘をしているわけではないのでそこまで消耗しているということもないが、手元の石が底を尽きたので一度どこかで下に降りて補給しなくてはならないが、とりあえず今はこの一投で視線の先にいる術師を倒すことが先決だ。

 まずは足の踏み位置を調整。体勢が整ったら腕を後方に引き絞り、余分な力は排除し必要な部位にだけ力を込める。精神を落ち着けるように深呼吸し心を脱力させ、一度頭の中をリセットし空白を生み出す。視線の中央に標的を合わせ、握っている石の感触を確かめ最適な位置に指を添える。呼吸の僅かな動作で指先がぶれないように一時的に呼吸を止め、腰を捻り、肩を振り上げ、力の起点から肉体を始動させ、流れるように自然な動作で指先に力を移動させ、全ての力を集結させた全力の一投を解き放つ!

 指先から石が離れた瞬間に、鋭敏に研ぎ澄まされた感覚が必中の予感を伝えてきた。

 そして直後に頭の中にガイドさんの声が響く。


 『スキル取得条件を満たしました。スキル《力の収束》を取得。スキル《感覚強化》を取得。ならびに称号《投擲士》を取得したことによりスキル《投射》を取得しました』


 ガイドさんの声が響いている途中でゴブリンに投石が到達し、その首をへし折ったのを確認していたので何を言っていたのか話半分でしか聞いていなかったが、どうやらスキルを取得したようだ。すまんガイドさん、せっかく教えてくれていたのに無視したみたいになっちゃって。今からさっと確認するから許してほしい。

 戦闘中だけど、いざという場合に備えてスキルを確認しておくのは俺にとって死活問題なので、ステータスを開き手早くスキル項目を表示させる。

 えっと、これか。おぉ、三つも増えてる。力の収束と感覚強化と投射か。効果は…。


 《力の収束》

 全ての力を一点に集中させることにより、一撃の威力を向上させる。


 《感覚強化》

 五感をそれぞれ任意で強化することが可能。


 《投射》

 投擲の速度、及び威力を向上させる。


 …すげぇ真っ当なスキルだ。

 どれもかなり役に立ちそうだけど、今は投射が一番ありがたいかもしれない。これがあれば更に確実にゴブリンを一投で仕留めることができるようになるはずだ。

 あとの二つのスキルも有用そうなスキルだが、正直使いこなすのには最低限の訓練が必要になりそうなので、今この場面では必要ない。

 だが、優秀なスキルはいくつあっても無駄になるということはないのでこれはこれで取得したことはかなり嬉しい。常用出来そうなスキルなら尚のことだ。

 とりあえずは頭の片隅にでもその存在を置いておくことにするが、この戦いが終わったら慣らし作業をすることにしよう。

 さて、それじゃあ次の投擲のための弾丸を拾いに行くことにしよう。

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