戦姫として3
「だがしかし、だ。君を連れていくこと自体を取り止めることはできないが、彼らがこちらへ同行したいというのであれば、それはこちらとしても歓迎はするがな」
「!!」
それを聞いた瞬間、ぱっと表情を輝かせたアンネローゼは、ミリオへとそのつぶらな瞳を向けた。
自分についてきてくれることを疑わない、信頼感に満ちたその視線を受けたミリオは、それに微笑んで返し、何かを考えるような素振りをみせて、ニーアさんの方へと向き直る。
「いくつか聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「あぁ、構わないとも」
「ありがとうございます。では。彼女を王都へ連れていくという話なんですけど、それは確実に一年後じゃなければ駄目なんでしょうか? たとえば、もう一年期限を伸ばすことはできませんか?」
それはたぶん、ミリオが自身の目的を達成するために必要な時間を逆算した結果に出したものなんだろう。
諸々に費やす時間を計算し、アンネローゼがいることを前提とした場合に掛かる時間をざっくりと数え、ギリギリ間に合うと踏んだ年数が今から二年後ということだ。
「無理だな。そもそも、その期限を決めたのは私ではない。まぁ、アンネローゼの実力が予測よりもよっぽど劣っていた場合にはそれもあり得たかもしれないが、彼女のそれは十分なものだったと、私は確信している」
「……そうですか」
それはなんとも皮肉な話だ。
アンネローゼが強くなり過ぎてさえいなければ、時間的にはまだ猶予は残されていたのだろうが、彼女が強くなればそれだけ旅の安全性は増し、そのためにミリオは頻繁に任務を請け負い、自身を強化すると共に彼女を更なる高みへと至るように仕向けていたんだから。
「では。僕らが彼女に同行した場合、その扱いはどういう形になるんでしょうか?」
「軍へと所属してもらうことになる。どの部隊に所属されるのかは現時点では答えられない。適正検査の後に指揮を担当する者たちによって選定されることになっているからな」
軍、ね。
戦姫というものがどういうものかは知っていたが、それに同行するってことはやっぱりそういうことなんだな。
「なるほど。では。軍に属した場合その後の自由はどの程度保証されているんでしょうか?」
「自由行動は原則禁じられている。特殊任務を請け負った場合においては、その限りではないが、基本的には上官の命令に従って行動してもらうことになる」
「では、もう一つ。数ヶ月、数年単位で休暇を申請することはできますか?」
「それも場合によるが、それほど長期の休暇は基本的には許可されないだろう。一般兵ならば兵役期間を終えた後は自由となるがな」
「そうですか。ありがとうございました。よく分かりました」
必要な質問を終えたのか、ミリオはそう言って一礼してみせると、再度アンネローゼに向き直り、そして告げる。
「ごめんね、アン。僕たちは、君について行くことはできないよ」




