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戦姫として2

 たしかにニーアさんの言う通り、これまでアンネローゼが国からの援助を受けて生活を送ってきたのだとすれば、それを受け取った時点ですでに契約は済んでいるわけであって、その対価が戦姫としての活躍を見込まれてのものなら、それを一方的に破棄するのは難しいだろう。

 たとえそれが彼女の意志に反したものであったとしても、一度交わした契約を破ることは確実に罪に問われるだろうし、そうなったら最悪の事態に陥ることも予想できる。

 かといって、そこから物理的に逃れようとすれば国を敵に回すということになり、その場合は、目の前にいるこの人を含めた圧倒的強者たちに追われるはめになり、逃げ切れる可能性は皆無だ。

 ……まぁ、あくまでもそれは契約から逃げようとした場合の話であって、アンネローゼが素直にあちらに従うのであればそんな状況に陥ることはないんだけどな。

 それに、彼女が本格的に戦姫として鍛練を積むために王都へ行くことは悪いことじゃないと、俺は思っている。

 そもそも、俺たちと比べてみても明らかにアンネローゼという個は強すぎる。

 そんなことは初めから分かり切っていたことではあるが、この戦いを通して改めてそれを理解した。

 ──彼女は、俺たちとは明らかに成長の速度が違いすぎる。

 それに関して言えばクレアもそうだが、クレアの場合は俺のスキルの影響を受けているのもあるが、魔力操作以外の部分に於いてはそこまで突出したところはなく、戦闘中にいきなり強くなるということもない。

 だが、アンネローゼは別だ。

 彼女は、この戦いの中で異様なまでに速く成長してみせた。

 自惚れるわけではないが、この戦いが始まるまでのアンネローゼになら、力をすべて解放した状態の俺ならたぶん勝てただろうと思っている。

 でも、その状態の俺ですら呆気なくやられてしまったニーアさんに、アンネローゼは真っ向からぶつかり、一度の交錯限定ではあるが自身の力のみで勝利を収めたという話だ。

 そんな彼女の特異な才能を伸ばすための機会が向こうからやってきているのに、それを無下にさせるようなことは、少なくとも俺にはできない。

 優れた指導者がいて、他の優れた才能を持った者たちもいて、ここよりも良い環境があるのならば、間違いなくそっちへ行った方がアンネローゼにとってはプラスになるだろうし、これから先のことを考えれば確実にそれが彼女のためにもなるだろう。

 たしかに、賑やかなアンネローゼがいなくなれば単純に寂しいし、せっかく仲良くなった相手と別れるのはつらい。

 それに、ミリオの目的に年単位で遅れが出てしまう可能性もあるが、そこは仕方がないことだろう。

 ただ気になることは、独特な感性を持ったアンネローゼがそっちでも上手くやっていけるのかどうかということと、あと一つ──ニーアさんが言った《ギフト》という言葉だ。

 今までに何度か耳にしたその単語。

 それがアンネローゼの──強者たちの持つ強さの秘密なのだとしたら、それを知ることでなにかを得られるかもしれないからな。

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