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挑戦後

「では、これにて君たち全員の能力を試し終えたわけだが、まだ余力が残っているというのなら引き続き相手を引き受けよう。どうだ?」


 戦姫たちとの模擬戦を終え、ひとまず定位置まで戻ってきたところで剣の戦姫──ニーアさんが俺たちに向けてそんな提案を投げ掛けてくる。

 が、明らかに全員が体力的にも、魔力的にも、精神的にも限界一杯の状態なので、当然のようにそれを辞退しようとしたところで「はいはいはーい!」と元気よく手を上げて、それをブンブンと振ったアンネローゼが前へと出る。


「アン、まだやりたーい! って、にゃあ!」

「おっと」


 だが、勢いよく足を踏み出した瞬間、突然力が抜けたように膝から崩れ落ちそうになるが、ミリオがその肩を掴み、危ないところをなんとか脱する。


「あー、びっくりしたー! ミー君ありがとう!」

「どういたしまして。でも、その様子じゃこれ以上戦うのは無理だよ、アン。今日はもう諦めなよ」

「え~。むぅ……じゃあ、明日! また明日やろう、ニアちゃん! あ、レウちゃんも明日ならできるよね!」


 ミリオの言葉を渋々ながらも受け入れたアンネローゼは、それでもまだまだ戦い足りないとばかりに、そう言って二人の戦姫と約束を取りつけようとする。


「いや、それは無理だ」

「ほぇ?」


 それに対する戦姫の答えが予想外のものだったのか、アンネローゼはすっとんきょうな声を上げて首を傾げてみせた。


「昨日にも言ったように、我々がこの街へと来た一番の目的は、君に会い、その成長がどれほどのものかを確かめるためだ。そして、その他の目的も果たした今、すでにここへと滞在する理由もなく、即刻で次の地へと向かわねばならない。なので、悪いが君の要望には応えることはできない」


 彼女としても残念な気持ちがあったのか、その声音は少し沈んでいるように思えた。

 それでも、なにを優先すべきかを考慮した結果の判断なので、これ以上言葉を重ねたとしてもその答えが変わるようなことはないだろう。


「……う~」

「アン。仕方ないでしょ。ニーアさんたちには戦姫としての役目があるんだから、そんな未練がましい目で見ちゃ駄目だよ」

「でも~」


 自分よりも遥かに格上の相手と戦えたことがよっぽど楽しかったんだろう、アンネローゼは駄々っ子のように、爪先で地面をこつこつと削りながら、頬を膨らませてぶうたれている。

 ミリオはその相手をしていて、このままでは拉致が開かないと思い、助け舟を出すようにニーアさんへ質問を投げ掛ける。


「あー、その。ニーアさんは、次にこっちへ来る予定とかは決まってるんですか?」

「ん? あぁ、そうだな。一年後、アンネローゼを迎えに来る時に余裕があれば私もついてくるつもりではあるが、どうだろうな」

「一年後か」


 ……ん?


「……あの、アンネローゼを迎えに来る、ってどういう意味ですか?」

「どういうもなにも……聞いていないのか?」

「えっと?」


 聞いていないって、なんの話だ?


「そうか。であれば、今伝えておこうか。彼女──アンネローゼは、一年の後を以て、正式に我々の下へ所属することが決まっている。つまり、彼女がここに居られる時間は、あと一年ということだな」


 と、心構えも済んでいない内に、ニーアさんの口からそんな爆弾発言が投下され、目の前の相手が誰かも忘れて思わず「は?」と呆けた声を上げてしまった。

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