表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
543/644

挑戦18

 結局、一度も戦姫に対して意味のある一撃を与えることができなかったという悔しい気持ちを覚えると同時、致命傷を負うことなく、それまでの自身が扱うことのできた力以上のものを取得できたことに達成感を覚えながら、わずかにぼやけた視界で戦姫の姿を追う。

 その足は、先程の余波をもろに受けて吹き飛び、立ち上がろうとしているアンネローゼの近くを通りすぎ、ミリオの下へと向け進められていく。

 それを察したミリオは、アンネローゼが復帰するまでの時間を稼ぐためか属性を付与した矢を放ってみせるが、まるでその場から掻き消えたかのような高速移動をしてみせた戦姫に容易く躱され、気づいた時にはミリオが俺と同様に地面へ倒れ伏していた。

 感覚が強化されていない状態では、それこそ数秒間の時が消し飛んでしまったように感じられ、今の一瞬でなにが起きたのかを捉えることはできず、改めて強さの次元の違いを見せつけられた気にさせられる。

 そして、ミリオを降した戦姫はその足でこちらの最後の戦力であるアンネローゼの下へと戻ってくる。

 だが、戦姫を目の前にしてもアンネローゼは動かない。

 槍を構え、いつでも動き出せるように体勢は整えているものの、その体は微動だにせず、ただ戦姫の動きに意識を集中させているようだ。

 ……それを目の当たりにして、驚く。

 それは、今までのアンネローゼには考えられなかった変化だ。

 これまでの彼女なら、相手が誰であろうとも攻撃一辺倒の姿勢をみせ、攻めることからすべての流れを形成していたように思う。

 が、今のアンネローゼからはそのような気配はみじんも感じられず、よく見ればその構えも防御に転ずるためのものだと分かる。

 さすがのアンネローゼも、戦姫が相手では攻めの姿勢を貫いても無駄だということを悟り、戦闘を長引かせることでできる限り技術を吸収する方向に舵を切ったのかと、そう思った──その口元に浮かぶ笑みと、不気味なほどに爛々と輝く目を見るまでは。

 戦姫を見つめる瞳には、極上の獲物を前にした肉食獣のような妖しい光をたたえ、口元いっぱいに浮かべた笑みからは、それを喰らうことが楽しみで楽しみで仕方がないという感情がありありと見て取れ、間違いなく戦姫を撃破してみせるという意志が感じられる。

 そう。あくまであの防御姿勢は、反撃へと打って出るために用意された彼女なりの最善手なのであり、やはりその本質は攻撃的なものだということだ。

 だがそれだけに、今まで彼女が見せたことのないその姿勢からは、これまでにあった余裕、油断、慢心といった軽々しい気配が完全に消え去り、ある意味ではこれがアンネローゼの見せる、初めての本気の姿なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ