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挑戦17

 その挟撃は、確実に戦姫へと傷を負わせるに足るものだった。

 常時であれば、三方向から同時攻撃に晒されようとも意にも介さない彼女であっても、片足を掴まれた──移動を封じられた──状態ではそのすべてを捌くことなんて不可能なはず……だった。


「──見事だ」


 だが、どこか嬉しそうな響きを含ませた一言が耳に届いた瞬間、視界に映るものすべての動きが鈍化し、それを見る。

 最初に、閃くような速度で動いたのは戦姫の腕。

 片手に握られていた剣がわずかに魔力光を発し、形成された魔刃によって地面から突き出してきた土槍が、ミリオの下から伸びていた魔力ごとすべてを断ち斬った。

 次に動いたのはもう片方の腕。

 戦姫は腰に伸ばした手で鞘を掴み、剣帯へ括りつけていたそれを凄まじい力で引きちぎると、アンネローゼの槍に真上から叩きつけて無理やりに軌道を変えてみせる。

 そして、戦姫は両腕を振るったことで発生した遠心力で体を急速回転させると、掴まれているのとは逆の足を真下へと持っていき、轟音と共に地面に接触。

 全力で振るった戦姫という名の鉄鎚は、陥没痕を刻むと同時に周囲へ激しく土砂を撒き散らすが、彼女自身が手傷を負った様子はなく、直後に折り畳んでいた足を伸ばしてその体を跳ね上げる。

 飛び上がると共に体を捻り、こちらへと視線を向けた彼女からはなぜか三本の線が伸びていて、それがなにを意味しているかを理解しないまま、頭の中で警鐘が鳴り響いた瞬間に《不動》を──


『アクティブスキル《不──』


 発動するよりも速く、体に三度の衝撃が走り視界が黒一色に染まる。

 ……そして、消えていた視界に色が戻ると、なぜか目の前に銀色のなにかが見えた。

 それは徐々にこちらから遠ざかっていき、ある程度離れたところでそれが戦姫の身につけている鎧のものだということを理解する。

 同時に、いつのまにか自分が地面に横たわっているのだということも。


「っ!」


 なにをされたのかは分からない。

 だが、体が動かず、痛みがあることからスキルが効果を失ってしまっているのだということは分かる。

 特に顎辺りの鈍痛が酷く、《不動》を発動しようとしたあの瞬間にここへ攻撃を受けたことが、瞬間的に意識を断ち切られてしまった原因ということなんだろう。

 そして、そんな俺を置いて戦姫はミリオとアンネローゼの下へ足を進めていく。

 ……それが意味するところは、この戦いにおいて最初に脱落したのが俺だということだ。

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