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挑戦14

「《サンダーショット》!」


 が、その斬撃がこちらを捉えるよりもわずかに速く飛来した、雷を纏う一矢。

 それは戦姫の頭部、その中心へと一直線に走り、彼女に回避という選択を取らせる。

 そして、そのほんの少しの差で《不動》の硬直状態が解除され、一度状況を仕切り直すために《力の収束》を使用してその場から全力で飛び退く。


「逃がすか」


 しかし、それを許さないとばかりに追走してくる戦姫の速度はこちらよりも速く、このままいけば着地と同時、もしくはその直後に再度あの凶刃を見舞われることになるだろう。


『アスマ』


 と、その思考を遮るかのようにミリオから思念が飛んでくる。


『作戦の二番でいこう。今のアスマなら、やれるよね?』


 ──作戦の二番。

 それを聞いた瞬間、正気か? という率直な感想が頭の中に浮かぶが、可能かどうかと問われればたぶん可能だ。

 普段の俺では絶対に遂行不可能で、先程までの俺でもかなりの危険が伴う、一度は断った作戦と言えるのかも怪しいその策だが、この状況で取れる選択の中ではもっとも効果的なんだろう。

 その場その場で最適解を模索し続けてくれているミリオがそう判断したのなら、俺のできる限りでそれに応えてみせよう。

 それが、信頼ってやつなんだろうから。


『……上等だ!』


 そう啖呵を切ってみせると同時、《危険察知》が目の前の脅威に対して警鐘を鳴らし、《行動予測》が虚空にその軌道を描く。

 そして、着地した瞬間それをなぞるようにして迫ってくる剣を上体を逸らすことでギリギリ躱し──そのうえで背後から放たれたそれを、頭を全力で傾け紙一重で回避してみせる。


「なっ!?」


 俺の頭部を掠めるようにして突き出たそれ──アンネローゼの槍は、追撃を放とうとしていた戦姫の肩部も掠めてみせ、ほんのわずかにだが彼女の鎧に擦過傷を与える。


「ありゃりゃ、外れちゃった~」


 呑気な口調でそう言ってみせたアンネローゼは、しかし、今の成果に満足できなかったのか少し不満げ様子だ。

 だが、今の一撃は戦姫の鎧へと目に見える成果を刻み、最初に入れた一撃とは比べものにならないほどに確かな攻撃としての結果を残した。


「……そうきたか」


 こちらのやり口を理解したのか、戦姫は槍の間合いから一歩外れるように後退し、そう呟いてみせる。

 ──作戦の二番とは。

 俺が戦姫の攻撃をすべて引き受けアンネローゼの盾となることで、彼女を完全に攻めることだけに専念させることを意味している。

 それもただ盾となるだけでなく、俺の体を目隠しとすることで相手の視界を遮ってアンネローゼの姿を隠し、さらに槍の軌道をギリギリまで悟らせないために彼女には俺ごと貫くつもりで槍を突き出すように指示してある徹底ぶりだ。

 俺の能力とアンネローゼの技、それらを最大限に活かすために立てられたこの作戦は諸刃の剣であるが、効果のほどは見ての通りだ。

 俺には戦姫に届きうる技がなく、アンネローゼにはまだ戦姫を正面から食い止める能力はない。

 これは、戦姫へと届かせるためにミリオがそれを無理やりに掛け合わせ、なんとか形を整えてみせたものであり、これこそが今の俺たちにできる最大限の力を発揮する戦闘形態だ。

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