挑戦13
「だあぁらっ!」
大地を強く踏み締め、握り直した剣を気合いの咆哮と共に押し返し、そして振り抜く。
「っ!?」
自身の有利を信じて疑っていなかったであろう戦姫は、またもや不意に能力を向上させた俺に押し負かされたことを心底驚いてみせる。
そのわずかな隙を見逃さずに振り切った剣を瞬時に引き戻すと、畳み掛けるようにして剣撃を叩き込んでいく。
「うおぉぉあぁっ!」
それは繊細さとは程遠い、速さのみを追求したような力任せでデタラメな剣の乱舞。
身につけた技の残滓は感じさせるものの、もはやそれを剣術と呼ぶことはできず、暴力という表現がしっくりとくるほどに荒れ狂っている。
ただし、技術に反してその一撃一撃は非常に重く鋭いもので、戦姫が自身のそれで受け止めるたびに轟音がこれでもかと鳴り響く。
速く、速く、もっと速く。
剣技の乱れとは裏腹に肉体の扱いだけは本能的に最適化されていき、徐々に剣を振るう速度が増す。
「ふっ、どんどん力が増しているな。面白いぞ君。なるほど、あの二人が目を掛けるわけだ。可能性の塊じゃないかこれは」
戦姫は剣撃を受け止めながらも、楽しそうにこちらを値踏みしているようで、動きを見せるたびに絡みつくような視線が送られてくる。
「だが惜しいことに、やはり君のそれには決定的に技が足りていない。まるで獣だ。ならば対処は容易いというもの」
戦姫はそう言ってみせると、先程までと同様こちらの剣撃に合わせるようにして剣を構えてみせる。
そして、それらが衝突する瞬間半身になり、こちらの剣身に沿わせるようなかたちで自身の剣を滑らせ、真横に力を加えることで剣の軌道を狂わせると同時に反撃の一太刀を浴びせてくる。
「っ!」
こちらの胸を狙って放たれた鋭い一撃。
だが、スキルにより事前に察知していたために焦りを覚えることもなく身を屈めて躱すと、その動作の流れから足を払うように蹴りを放つ。
それに対して戦姫が選んだのは、後方に跳躍しての回避。
無駄を一切排除したような、低く、鋭い跳躍でこちらの蹴りを躱した戦姫は、即座に反復運動でこちらへと戻ってくると、俺が体勢を戻す前に上段から剣を振り下ろしてきた。
身を捩ることでなんとか紙一重で躱すが、剣が地面に接触する直前、戦姫は剣の握りを変えV字に斬り上げるような斬撃でこちらの動きに追従してくる。
『アクティブスキル《不動》発動』
不自然な体勢からでは、軌道を読めていようとも回避することが困難なそれを《不動》で受け止める。
しかし、ここまでに二度見せている《不動》の効果を、戦姫はすでに悟っているようで、さらに追撃の一手が放たれる。




