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挑戦9

『パッシブスキル《限界突破》発動』


 あまりの痛みと衝撃に意識が吹き飛びそうになるが、それと同時に発動した《限界突破》の効果により発生した痛みは消え去り、すんでのところで気を失うことだけは回避することができた。

 そして、身を捻って地面に拳を叩きつけることで体を跳ね上げ、なんとか姿勢を制御して地に足をつける頃には、ミリオのすぐ傍まで来てしまっていた。


「げほっ、げほっ!」

「アスマ、無事!?」

『っ、あぁ。なんとか、な』


 咳き込みながらもなんとか呼吸を取り戻したところで、ミリオからこちらを心配する声が掛かったので息を整えつつ思念で返事をし、すぐさま《力の収束》を発動すると、急いで戦姫の下へと戻るために力強く地面を蹴りつける。

 視線の先では、今まさに戦姫とアンネローゼが刃を交えようとしているところで、二人の攻防に横槍を入れるようなかたちで、背後から躍り掛かった。


「おぉらっ!」


 アンネローゼが槍を繰り出したと同時に、わずかにでも戦姫の気を逸らせようと声を上げて繰り出した剣は、それを無視するかのように槍を掻い潜りながら前に飛び出した彼女には届かず、空を切る。

 くそっ、速い!

 先程の宣言から一気に速度を増した戦姫の動きは、こちらのそれを遥かに凌ぐもので、それまでの動きがいかに手加減されていたものかを思い知らされると同時に、なにも通用しないことに焦りを覚える。

 そして、戦姫はアンネローゼの懐に潜り込むと、下方から斬り上げた剣で彼女を斬り裂く──


「《アースウォール》!」


 寸前。

 ミリオの発動した土壁がアンネローゼの足下から出現し、その身を持ち上げると同時、戦姫の剣が土壁を斬り飛ばす。

 難を逃れたアンネローゼは、斬り飛ばされた土片を蹴り飛ばして戦姫の上を取ると、全身の捻りを槍へと伝え、手の中で滑らせるようにしてそれを放つ。

 動揺からわずかに遅れてしまったが、それに合わせるようにして俺も横薙ぎを繰り出し、戦姫に縦と横、二方向からの攻撃を見舞う。


「にゃあぁっ!」

「らあぁっ!」


 剣を振り上げた状態で双刃を前にした戦姫だが、彼女は異常なまでの速度で腕を振るい俺の剣を自身のそれで弾き飛ばし、同時に槍を掴み取ると、俺の下へアンネローゼを叩きつけてくる。


「なっ!?」

「ふぎゃあっ!」


 さすがのアンネローゼもあそこまでの速度には対応できなかったようで、悲鳴と共に俺の胸元へ頭から突っ込んできて、諸共その場に倒れ込んでしまう。

 痛覚が無効化されているおかげで、痛みに悶えるというようなことにはならなかったが、アンネローゼは強かに頭を打ちつけたせいか、声にならない声を上げて俺の胸元に顔を埋めている。

 そして、この状況を生み出した張本人である戦姫は、そんな俺たちを見下ろして、上段に構えた剣を今まさに振り下ろそうとしていた。

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