挑戦7
「りゃあーっ!」
気合いと共に繰り出されたそれを、戦姫は上半身を捻るようにして躱わし、その動きと連動するように振り上げた足で、無防備なアンネローゼの背に蹴りを叩き込もうとした、その瞬間。
『アン、前に跳んで!』
繋ぎっぱなしにしている《思念会話》を利用して、ミリオがアンネローゼに指示を出す。
そして──
「《アースピット》!」
言い終わるや否や、ミリオは土魔術を発動。
戦姫が軸にしている足の真下、そこに小さな穴を作り出し、彼女の体勢を崩す。
「小癪なっ」
その絶妙な嫌がらせに苦言を漏らしつつも、動作自体は止めることなく、戦姫は崩れた姿勢のままでアンネローゼに蹴りを放ってみせる。
が、ミリオの言葉を受けた直後に、前方へ転がるようにして跳んでいたアンネローゼは、背を掠めるほどギリギリのところでそれを回避することに成功する。
「ひゃあ~! あっぶなかったー。ミー君ありがとう!」
手足を高速回転させて危険域から遠ざかったアンネローゼは、素早く起き上がってからこちらに振り返り、手を振ってミリオに礼を言う。
『うん。どういたしまして』
それに対するミリオの反応はいつも通り、実にさっばりとしたもので、それがまたとてつもなく頼りになる。
先程の《アースピット》にしても、敢えて魔力を少なく使用することで相手にその反応が気取られるのを防ぎつつ、収束に用いる時間も短縮して、威力が減少する代わりに高速で魔術を発動させるという、普通ならあまり使われないような手まで使って最善の結果を導き出してみせた。
やっばり、ミリオが補助に回ってくれるとこういった場面での安心感が段違いだ。
それに──
空の手を握って開くという動作を数回繰り返し、地面を踏みしめてみて、体から完全に痺れが取れたことを確認する。
二人が時間を稼いでくれたおかげで、こうして回復することができた。
……さっきは想定外の斬撃を戸惑いながら咄嗟に防御したせいで、余計な負荷が掛かってこんなことになったけど、もうこんな失敗は絶対しない。
スキルの制限時間も、もうかなりのところまできているだろうし、これ以上余計なことに時間を割いている暇はない。
だから、ここからは、命を奪われる可能性すらも視野にいれて、相手を完全に無力化させるつもりで、全力を出させてもらう。
「っ!!」
『アクティブスキル《力の収束》発動』
その決意と共に、体勢を立て直した戦姫の背後へと一気に肉薄し、握り締めた剣を力の限りで振り下ろす。




