挑戦5
「反応速度もだが、それ以上に身体能力が昨日とは完全に別物だ。あれは、手を抜いていたということか?」
「そういうわけじゃないんですけどね。ただ、あの時はまだ相手が戦姫だってことを知らなかったんで、使わないでいただけですよ」
制限時間のことを考えればこのように会話などをせず、今すぐに打って出るべきなのだろうが、体に痺れが残っている状態では万全に体を操ることができず、わずかに反応が遅れてしまう。
安静にしていればすぐに治まる程度のものではあるが、今の状況では、その遅れがなによりも致命的であり、それを解消しないことにはこちらから動くべきではないだろう。
そのためには少しでいいから時間を稼ぐ必要がある。これは、そのための一つだ。
「ふむ。では、一つ質問だ。その力は常時発揮できるものなのか? それとも、なにか制限のようなものがあるのか?」
「……時間に制限がありますね」
「時間か。それはどの程度だ?」
「正確なところは分かりませんけど、あまり長くは持ちません。さっき、ガルムリードが戦っていたぐらいの時間、ですかね」
「なるほど。それは短いな」
どこか残念がる口調でそう言うと、戦姫は剣を構え直し、こちらにその切っ先を向けてみせた。
「では、こうしている時間も惜しいな。その力がどの程度まで通用するものなのか、時間の許す限りで確かめてみようじゃないか」
……やっぱりそうなるよな。
制限の話をすればこうなることは予測できていたが、会話の流れを上手く誘導できるような嘘が思いつかず、正直に話した結果、ある意味で予想通りの展開に話が進んだ。
だから俺は、危険なのは承知で、この戦いが始まる前に発動させていた《思念会話》で二人に頼みごとをする。
『悪い二人とも、ちょっとだけ時間稼ぎ頼んでもいい?』
という、少し情けない願いに対し、二人は即座に『了解』と答えてみせ、行動を開始した。
「さぁ、行くぞ──」
その戦姫の掛け声が、きっちりと発声される直前。
俺の脇を掠めるようにして、ミリオの放った矢が戦姫の下へ飛んでいく。
それはなんの魔術も付与されていないただの矢で、戦姫により簡単に斬り払われてしまうが、その一矢はあくまでも相手の注意を逸らすためのそれであり、本命は──
「なんと無粋な──」
背後から忍び寄っていたアンネローゼによる刺突攻撃。
剣を振るうと同時に放たれたその高速の槍は、しかし、驚くような速度で身を翻してみせた戦姫に躱されてしまい、さらに高速で放たれた反撃の蹴りがアンネローゼの腹部に直撃した。
「やつらだ。君たちは」




