表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/644

打ち止め

 「…もら、うね」


 俺が全開で放ち続けている魔力水を、レイエルが精霊術で操り、上空へと浮かび上がらせるとその場で四散させ、広範囲にその水を散布する。まるで雨のように降り注ぐ水が辺り一面を濡らし、草木からその雫が流れ落ちている。

 正直その程度の水量では炎は消えるわけもなく、いったい何をしているのか疑問に感じたが少し考えてその意図が分かったような気がする。

 たぶんあれはこれ以上火を燃え移らないようにするための措置なんだろう。火を消すことだけを考えていたが、確かに燃え移りを予防することも大事なのだということに今気付いた。

 これが経験した場数の違いだというのか、その後も淀みなく消火作業は続きまずはこの一帯の炎を鎮火することに成功した。

 だが、依然として辺りを照らす光はあちこちに散見でき、事態を楽観視できるような状況には程遠い。

 やはり先程セシリィが言っていたように、この炎を燃え広げさせている術師がいるせいなのだろう。多少消火作業を進めたところでいたちごっこを続けているようなもので、完全に鎮火させるためにはその術師を何とかすることが一番の近道であることは明白なのだが、どこにいるのかなんて分かるはずもなく、ゴブリンの術師というのなら見た目も他のゴブリンと大して変わらないだろう。

 それをこの状況で見つけるためにセシリィとミーティアが手当たり次第ゴブリンを始末していっているのだが、もうその姿は木々に隠れてしまい、ほとんど見ることはできなくなっている。

 二人が通った後には斬殺されたゴブリンの死体が量産されていて、血臭もものすごいことになっている。


 「レイエル。ここからじゃ二人も、炎もあまり見えないし俺たちも移動した方がいいんじゃないか?」

 「…ううん。大丈、夫。ここ、から、でも、精霊を、通し、て見え、る、から」


 精霊を通して見えるというのは、精霊を仲介して視界を確保しているということか? そんなことまでできるのかよ。本当にエルフの万能っぷりにさっきから驚愕しっぱなし何だけど。


 「そっか、了解。でも、そろそろ俺の魔力も限界に近づいてきたから、打ち止めになったらその後一人になっちゃうけど大丈夫か?」

 「…ん。問題、ない」


 と、そんな会話をしていたら前衛二人が討ち漏らしたのか三体のゴブリンが前方の木々の陰から這い出るように姿を現した。

 が、その姿を確認した直後、不意に甲高い風切り音が聞こえ、それと同時に三体のゴブリンが首筋から大量の血飛沫を上げそのまま倒れ伏した。


 「…もしかして今のも精霊術?」

 「…ん。風霊、の、術」


 うん。もうあれだな、レイエルが起こす奇妙な現象はとりあえず精霊術と思っておけば間違いないのかな。

 というか、正に見敵必殺ってやつだな。敵が見えた瞬間に全ては終わってた。確かにこれなら一人でも問題はなさそうだ。むしろ本当に俺は水出し係以上の役割をこなす必要があるのか怪しくなってきたな。いや、さすがにこの場にいて何もしないって訳にはいかないし、次の指示を出されている以上もちろんちゃんとやるけどな。

 …ん。そろそろ限界か。魔力をほぼ使いきってしまったため魔力水の放出を止める。


 「レイエル、悪いけど魔力切れだ。水はこれだけあれば何とかなるか?」

 「…分から、ない、けど。なく、なったら、別の、方法、で、消す、から」

 「うん、分かった。じゃあ俺はこれから次の指示通りに術師の索敵を始めるから、また後で」

 「…うん。気を、つけて、ね」


 その言葉に笑顔で返して、俺はセシリィたちの後を追いかけ始めた。

 魔力が残り少ないせいで少し体に倦怠感を覚えるが、今すぐにどうこうというほどのものではないため無視して行動を開始する。

 さて、ここからはどこから敵が出てきてもいいように集中力だけは切らさないようにしないと。

 さすがに何度も同じ失敗はしたくない。もうあんな無力感や後悔の念を感じないために今度は上手くやってみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ