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挑戦4

「とっ、ととぉ。へっへーん! やったぜ!」


 蹴りを入れると共に、アンネローゼはその反動を利用して戦姫から距離を取り、放り投げられた槍を回収する。

 そして、一撃を入れられたことがよほど嬉しかったのか、得意気な表情を浮かべ、指でピースサインまで作って喜びを表現していた。

 だが、まだだ。

 たしかに、運良く連携が決まったおかげで、なんとか一撃を叩き込むことができたわけだが、戦姫はそれを受けても微動だにしておらず、まったく痛痒に感じていないことは明らかだ。

 明確な勝利条件などは決めていないので、なにを以て決着とするかは定かではないが、これで終わりというのはあまりにもあっさりとしすぎていて、有り体に言ってしまえば全然もの足りない。

 せっかくの成長の機会をこれで終わらせるにはあまりにも惜しく、せめてその手掛かりだけでも得られないことには悔やんでも悔やみきれない。

 なので、不躾なのは承知の上、俺は自身の欲求に従うように剣を構え直し、戦姫へ追撃を掛けようとして──しかし、全力で防御姿勢を取った。

 ──直後。


「っ!?」


 身構えるように、腕を折り畳み構えていた剣に強烈な一撃が叩きつけられ、衝撃で体が後方に押し飛ばされ、全身に痺れが走る。

 それに抗うように歯を食い縛り、正面に視線を向けてみれば、その攻撃を放ってみせた張本人──戦姫がこちらを見据えていた。


「ほほう。今の一撃も防いでみせるか。なかなかどうして、やるじゃないか君」


 こちらを褒めるような言葉を投げ掛けてくる戦姫だが、正直それを喜べるほどの余裕は今の俺にはない。

 ……ギリギリだ。

 あの斬撃が仕掛けられる直前に感じた悪寒。それと、《危険察知》による警鐘のおかげでなんとかあれを防ぐことができたが、本当に危なかった。

 ──額から冷や汗が流れ落ちる。

 渇いた喉を濡らすために口の中に溜まった唾液を飲み干すが、それはなんの助けにもならず、ひりついた痛みがわずかに増したようにさえ感じられた。

 ……彼女が放ったあの一撃は、寸止めのそれではなく、確実に、俺を『斬る』という意志の込められたものだった。

 勘違いかと思い、その光景を何度も思い返してみるが、間違いなく、防いでいなければあの剛刃により、俺の体は斬り裂かれていただろう。

 魔刃を発動させていないことから、殺すつもりで掛かってきているというわけではないのだろうが、それでも、彼女の剣技の冴えは本物だ。

 なぜこうなったのかは分からないが、一つだけ確実なのは、少しでも気を抜いてしまえば、その時点で俺の挑戦が終わってしまうということだけだ。

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