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挑戦2

「どうやら準備は完了したようだな。どうだ、なにかいい策でも浮かんだか?」


 こちらの顔を順に見やり、ニーアさんは期待を込めたように、そんな言葉を投げ掛けてくる。

 だが、その問い掛けに対し、それを否定するようにミリオは首を左右に振ってみせた。


「いえ、特には。貴女に通用する策を用意できるほど、僕は優秀ではありませんから」

「ふむ。そうなのか? いい顔つきをしているから、てっきりそうなのだとばかり思っていたが……まぁ、いいか」


 予想していた返事よりもつまらないものだったからか、拍子抜けしたような声でそう答えたニーアさんだったが、それならそれで構わないが、といった様子ですぐに調子を切り換えると、腰に差した剣に手を掛けてみせた。


「あぁでも、貴女を退屈させるようなことにはならないと思いますよ。僕とは違って、この二人はいつでも予想を上回る結果をみせてくれますから」


 ……なんて小っ恥ずかしいことを言うんだ、君は。

 というか、アンネローゼはともかくとして、俺のそれはある意味でっていう注釈つきだろ。確実に。

 卑下するつもりじゃなく、本来の実力的には未だにみんなの足元にも及ばないわけだし。

 まぁ、それぐらい期待してくれてるっていうことなら、応えられる限りで応えてみせるけどさ。


「ほお。その二人の実力はすでに把握しているつもりだったが、そういうことなら期待をしてもいいということだな?」

「ええ。存分に」

「ふっ。いいだろう。ならば、早速始めるとしようじゃないか。さぁ、いつでも掛かってくるといい!」


 気合いを込めたその言葉と共に、流れるような動作で剣を引き抜き、構えてみせたニーアさんは、まるで隙を感じさせない姿勢でこちらの出方を窺っている。

 それを見たアンネローゼは、もう我慢できないとばかりに槍を強く握り締めると、俺たちの方へと顔を向け、表情で「行ってもいい?」と訴え掛けてきた。

 それに対して、もちろんとばかりに俺たちが頷いてみせると、直後に身を翻したアンネローゼは、力強く地面を蹴りつけると、一気に駆け出す。


「いぃっくよー!」


 という、若干間延びした声とは裏腹に、俊敏な動きで、楕円を描くような軌道で相手に迫っていくアンネローゼを見送ると、目蓋を閉じ、呼吸を整え、意識を集中させていく。


「アスマ。いける?」


 そして、アンネローゼが接敵するまであと数歩というところまで距離を詰めたのだろう。ミリオから最終確認の声が掛かる。

 それに「ああ」とだけ短く返して、目蓋を開き──


『アクティブスキル《限定解除》発動』


 俺は、自身の持ちうる全ての能力を解放した。

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