称賛
「まぁ、なんだ。とにかく、色々とおつかれさん。すごかったぞ、クレア」
お疲れ気味のクレアを労るように声を掛け、先程の頑張りを褒めるように頭を撫でる。
『……あ……えへへ……うん』
はにかんだ笑みを浮かべて、クレアは俺の手に自分の手を重ねてくる。
そして、照れくさそうにしながらも満足げに撫でられ続けていたのだが、そんなクレアの背後から一つの影が覆い被さるように飛び掛かった。
「ク~~~ちゃん!!」
『……ひゃんっ』
この中でそんなことを仕出かすのは、もちろんアンネローゼだけで、彼女はクレアの肩越しに手を回すと、そのままがっちりと抱きついた。
「すごいねぇ。クーちゃんすごいねぇ! ニアちゃんにパンチ当てちゃうなんて、アンにもできなかったよ。うん、えらい! クーちゃんが一等賞だ! ばんざーい! ばんざーい!」
『……え……え……えぇ?』
やんややんやとクレアを持て囃し、自分の頬をぐりぐりと擦りつけるアンネローゼは、とても楽しそうな笑みを浮かべていて、心の底からクレアの挙げた成果を喜んでいるようだった。
そこには、自分にできなかったことをやってみせたクレアに対する嫉妬のようなものは一切窺えず、それがそのまま彼女の人柄の良さを表していた。
……まぁ、はしゃぎすぎてそのテンションにクレアが振り回されてるけど。
「アン、落ち着きなよ。クレアが目を回してるよ」
「ほえ?」
その肩に手を置いてミリオが注意を促すと、アンネローゼはそこで初めてクレアの状態に気づいたようで、「あっ」と声を上げてみせた。
「あやぁ、ごめんねクーちゃん。ちょっとワイワイしすぎちゃった」
『……あはは……うん……そうだね……ちょっと……うん』
力ない笑みを浮かべてそう答えるクレアは、少しふらふらとしていたが、気分が悪くなった様子はなさそうなので、とりあえずは安心する。
「アスマも、見てないで止めてあげればよかったのに」
「あぁ、いや。なんか、微笑ましいというか、羨ましいというか、ちょっと見入っちゃってた」
「……なに言ってんのさ」
……なに言ってんだろうな。
いやでも、このわちゃわちゃっとしてるところ、見てるの結構好きなんだよ、俺。
「でも、本当にお疲れクレア。すっごくいい勝負だったよ」
『……うん……ありがとう……お兄ちゃん』
微笑んでそう言ってみせたミリオに、笑顔で返すクレア。
兄妹のそんなやり取りに、さらに癒された気分になりながらも、そろそろ自分の出番か、と、静かにゆっくり意識を戦闘のそれへと切り換えていく。




