表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
524/644

称賛

「まぁ、なんだ。とにかく、色々とおつかれさん。すごかったぞ、クレア」


 お疲れ気味のクレアを労るように声を掛け、先程の頑張りを褒めるように頭を撫でる。


『……あ……えへへ……うん』


 はにかんだ笑みを浮かべて、クレアは俺の手に自分の手を重ねてくる。

 そして、照れくさそうにしながらも満足げに撫でられ続けていたのだが、そんなクレアの背後から一つの影が覆い被さるように飛び掛かった。


「ク~~~ちゃん!!」

『……ひゃんっ』


 この中でそんなことを仕出かすのは、もちろんアンネローゼだけで、彼女はクレアの肩越しに手を回すと、そのままがっちりと抱きついた。


「すごいねぇ。クーちゃんすごいねぇ! ニアちゃんにパンチ当てちゃうなんて、アンにもできなかったよ。うん、えらい! クーちゃんが一等賞だ! ばんざーい! ばんざーい!」

『……え……え……えぇ?』


 やんややんやとクレアを持て囃し、自分の頬をぐりぐりと擦りつけるアンネローゼは、とても楽しそうな笑みを浮かべていて、心の底からクレアの挙げた成果を喜んでいるようだった。

 そこには、自分にできなかったことをやってみせたクレアに対する嫉妬のようなものは一切窺えず、それがそのまま彼女の人柄の良さを表していた。

 ……まぁ、はしゃぎすぎてそのテンションにクレアが振り回されてるけど。


「アン、落ち着きなよ。クレアが目を回してるよ」

「ほえ?」


 その肩に手を置いてミリオが注意を促すと、アンネローゼはそこで初めてクレアの状態に気づいたようで、「あっ」と声を上げてみせた。


「あやぁ、ごめんねクーちゃん。ちょっとワイワイしすぎちゃった」

『……あはは……うん……そうだね……ちょっと……うん』


 力ない笑みを浮かべてそう答えるクレアは、少しふらふらとしていたが、気分が悪くなった様子はなさそうなので、とりあえずは安心する。


「アスマも、見てないで止めてあげればよかったのに」

「あぁ、いや。なんか、微笑ましいというか、羨ましいというか、ちょっと見入っちゃってた」

「……なに言ってんのさ」


 ……なに言ってんだろうな。

 いやでも、このわちゃわちゃっとしてるところ、見てるの結構好きなんだよ、俺。


「でも、本当にお疲れクレア。すっごくいい勝負だったよ」

『……うん……ありがとう……お兄ちゃん』


 微笑んでそう言ってみせたミリオに、笑顔で返すクレア。

 兄妹のそんなやり取りに、さらに癒された気分になりながらも、そろそろ自分の出番か、と、静かにゆっくり意識を戦闘のそれへと切り換えていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ