関心3
「……むう。そうか」
ニーアさんは先程までよりも一段沈んだ声でそう言って、小さくため息をついてみせた。
「いや、戦闘を好まないというのであれば仕方がない。もとより、無理強いをするつもりもないしな。残念ではあるが、ここは身を引いておくとしよう」
と、クレアに対しそれなり以上に関心を寄せていたにしては、意外にもあっさりと勧誘を諦めるニーアさん。
正直、もう少ししつこく続けるかと思っていただけに、ある意味拍子抜けしてしまう。
……クレアの気持ちを尊重してくれたってことなのかな?
だとしたら、思ってた以上にいい人なのかもしれないな、この人は。
「あぁ。それと、先程短剣を一振り駄目にしてしまっていただろう。その代わりと言ってはなんだが、これを君にやろう」
そう言って、ニーアさんは腰に差していた自身の短剣を帯ごと外すと、座り込んでいるクレアの膝の上へと落としてみせる。
それは、鞘に納まっている状態でも、一目見ただけで明らかに普通の武具店には置かれていないであろうことが窺えるほど洗練された造りをしていた。
鞘も、塚も、白一色で統一されたそれは、自体が芸術品であるかのように煌めいてみえ、武器としてはあまりにも綺麗な代物だ。
『……え……あの……こんなすごく高そうなもの……もらえないです』
そんなものをごく自然に渡されたクレアは、ぎょっとして一瞬固まっていたが、すぐさまそれを手に取るとニーアさんに突き返そうとする。
だが、一度やると言ったものを返されてしまっては立場がないからか、ニーアさんは素早く立ち上がると同時に数歩後ろに下がってみせた。
「価値がどうだかを気にする必要はない。それは素晴らしいものを見せてくれた対価として、私から君に贈ったものなのだからな。あぁ、もちろんそれを受け取ったからといって、あとで君を無理やりこちらに引き入れようなどというつもりもない。そこは安心してくれて構わない」
正直、そういうつもりがあるんじゃないかと思っていたが、それは杞憂だったようだ。
ただ、そう言われようともクレアとしては納得がいかないようで、短剣とニーアさんに向けて、何度も視線を往復させて困ったような顔をしている。
「ふむ。では、こうしよう。それは君に一時的に預けておく。だが、たとえ紛失してしまったとしても、私は君を責めるようなことはしないし、使用したければしてくれてもいい」
……それはもうほとんど贈与と変わらないんじゃないだろうか。
とは思うが、まぁ、彼女からすれば本当にただただ、贈りたいから贈っただけなんだろうし、そのあたりはどうでもいいのかもしれないが。
「返したいというのならば、いずれ私の下に返しにきてくれればそれでいいが、ただ返されたのでは私も面白くない。なので条件をつけさせてもらう」
『……条件?』
「うん。私にそれを返したいのなら、私を倒してみせろ。それが条件だ」
『……え……そんなの……無理です』
「無理だというのならば、私はそれを受け取らないだけの話。どうするかは君の自由だ」
身勝手にそれだけ言ってみせると、ニーアさんはわざとらしく「はっはっは」と笑い声を上げて、そのままレウナーレさんの下へと戻っていってしまった。
あとに残されたクレアは、もうそれ以上なにを言っても無駄なのだろうと悟ったのか、渋々それを膝の上へと置き、諦めたようにため息をついてみせた。




