関心2
『……えっと』
突然の勧誘に戸惑いの声を漏らすクレア。
だが、それは当然だろう。
誰だっていきなりそんなことを言われれば、その返答に窮してしまうものだ。
たとえそれが受け入れるためのものでも、断るためのものでも。
「君のそれは破格のもの。であれば、今のうちからその他技能や戦闘勘も平行して磨いておかなければ、損というものだ」
『……あの』
「幸いなことに、君は近接戦闘においても一定の能力を発揮できている。ならば、これを伸ばしていけばいずれは神聖国の聖女……いや、帝国の女帝にさえ届きうる可能性も」
神聖国の聖女とやらについては始めて耳にしたが、帝国の女帝については聞き覚えがある。
曰く、戦闘において無敗を誇る女傑であり、高位の生命体である竜種を一刀の元に斬り伏せてみせた怪物であると。
さらに、彼女は自身の手足となる『十牙』と呼ばれる、十名の強者で構成された直轄の組織を有しており、その者たちはそれぞれが無双を誇る強さ、ないしそれに準拠するものを保有しているという話だ。
そんなふざけた能力を持ち、そんな優れた人材を支配下に置いている女帝に、クレアが届くかもしれないというのはさすがに……いや、ないとは言えないのか?
まぁ、だとしても間違いなくクレアはそういったものには興味はないだろうけど。
「どうだ?」
『……ごめんなさい』
そう言って、クレアはニーアさんからの勧誘に、謝罪を以て断ってみせた。
「……理由を聞いても?」
『……その……私が冒険者になったのは……アスマ君と一緒に居たいからで……そのために強くはなりたいけど……離ればなれになっちゃうなら……意味がないから』
「ふむ。では、彼も一緒ならばこちらへ来ると?」
『……それでも……ごめんなさい』
譲歩の姿勢をみせるようにして、一つの提案を挙げてきたニーアさんだが、それに対してもクレアは謝罪と共に断ってみせる。
『……私も……それにアスマ君も……本当は戦うことがそんなに好きじゃないから……そういう目的だったら……私たちはついていけないです』
そうだな。
たしかにクレアの言う通り、俺たちは実際戦闘行為自体が苦手な部類の人間だ。
技術を向上させたり、身につけたそれを確かめたりする目的で模擬戦を行う分には抵抗はないし、むしろ楽しんでいるくらいだけど、それ以上になると気乗りはしない。
痛いのも、痛みを与えるのも嫌だし、血の臭いは今でも辛い。
刃物を振り回すのは怖いし、殺意を剥き出しにして襲ってくる魔物と対面するのは、たとえ絶対に勝てる相手だとしても普通に恐い。
ただ、それでも俺たちには俺たちの目的があって、そのために色々と乗り越えないといけない障害がある。
それを乗り越えるまでは、戦うことから離れるわけにはいかないので、今はただひたすらに自身を強化して、実戦を積んでいるわけだ。
だから、ミリオとの約束を終えた後も冒険者を続けるかと言われたら、正直分からないしな。




