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関心

「だが、それはそれとしてだ。今は君の話だよ、クレア」


 改めるように、一度咳払いをしてみせたニーアさんはそう言って、逸れそうになっていた話題を修正する。


「君は、私の放った魔刃を正面から弾き返してみせた。正直に言えば、これだけでも驚嘆に値するのだが、そのうえで君は私に一撃を入れてみせた。これは、あのアンネローゼですら成し得ることのできなかったことだ」


 それがいかに困難なことであるかを、興奮したように身振り手振りを交えて語るニーアさんは、楽しそうな声音で続ける。


「あぁ、これだけ精緻な魔力操作を行えるのなら、魔術師としても相当な高みへと至ることができたのだろうが、扱えないものをどうこうと言ったところで意味はなし。いや、むしろ扱えないからこその、あの魔刃なのか?」


 一方的にそうまくし立て、さらに思考に没頭してみせるニーアさんからは、圧倒的な存在感のようなものが消え失せ、無邪気にはしゃぐ一人の女の子のように見えた。

 その内容が戦闘に関することに寄っているのが、戦姫らしい、ということなのだろうが。


「まぁ、それについては然程重要ではないか。しかし、こんなことになるのなら第二ではなく第一魔剣も持ってくるべきだったな。あちらならば結果はどうなっていたことか……悔やむべきは過去の己か」


 額に手を当てて口惜しいとばかりの言葉を漏らすニーアさんは、落ち込んで肩を落としてみせるが、すぐに気を取り直すと、再度クレアへと視線を向けた。


「すまない。少し取り乱した。だが、それほどに私は君の魔刃に評価しているのだということだ。分かってくれるか?」

『……えっと……はい……ありがとうございます』

「うん。ほら、周囲を見回してみろクレア。彼らも君の技に感嘆の表情を浮かべているだろう」


 感嘆の表情ってどんなのだ?

 と、思いながら、それにつられるように俺も周囲を見回してみれば、こちらを遠巻きに見物していた人たちの、その誰もが驚いたように緩く口を開き、目を丸くしていた。


「彼らの反応こそが、君の素晴らしさの証明だ。いやはや、この街にまさか君のように才ある者がいようとは、夢にも思わなかったよ」


 感じ入るようにそう言って、ニーアさんは再度クレアに関心を向けてみせるが、その後に一つため息をつくと「だが」と否定の文言を口にする。


「それだけに残念だ。今まで君のような若き才能を、このような地で燻らせてしまっていたなんて」


 首を左右に振ったニーアさんは、本当に残念と思っているようで、その声音にはどこか陰が掛かっているように思えた。


「君はその才に見合った環境に身を置くべきだ。私ならばそれを用意することができる。だからクレア、君、私たちについてくる気はないか?」

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