魔刃使い
「おお!」
それを見たニーアさんは、歓喜の声を上げると同時にクレアの下へと一足飛びで詰め寄る。
だが、その速度は尋常ではなく、離れた場所から見ている俺ですら一瞬その姿を見失いかけた程だ。
『……っ!?』
もちろん、そんなものを間近で体験したクレアの驚きは、俺のそれとは比べものにならないぐらいに大きなものだったようで、反射的にだろうか、その魔力を纏わせた必殺の短剣を、無防備に接近したニーアさん目掛け放ってしまう。
「これは、なんと研ぎ澄まされた魔力だ。発動できるだろうとは思っていたが、これ程とは!」
しかし、その一撃はニーアさんの鼻先寸前、ギリギリで空を斬り、彼女は興味津々といった様子でそれを見詰めていた。
「刀身を覆う魔力に揺らぎはなく、それを無駄に放出している節も見られない。素晴らしいな。うん。素晴らしいぞ、これは」
まるで素晴らしい芸術品を前にした鑑定士のように、その技の冴えを見定めるニーアさん。
その反応に対し、クレアはどう対応するべきなのかを迷っているようで、完全に動きを止めてしまっていた。
「この完成度は、ひょっとすると彼以上か? いや、だが……」
戦闘が始まっているというのにも関わらず、動きをみせようとしない二人を訝しむように、周囲から戸惑いの声が聞こえてくる。
だが、そんなものはお構いなしに、ニーアさんは魔刃へと熱い視線を送り続け、そのうえでなにか思案しているようだった。
「……見て分からないのなら、やはり体感してみるのが一番か」
と、しばらくして。
不意になにかを納得したように頷いたニーアさんは、数歩後退すると、自身の剣を前方に突き出してみせた。
その直後に大きな魔力が彼女を中心に発生し、次の瞬間、その手に握られていた剣から光が漏れ出す。
それは刀身を覆い尽すように輝きを増していき、そして──
「よし。それでは仕切り直しといこう」
そこには、新たにもう一振りの魔刃が誕生していた。
……その光景にわずかながらに動揺してしまうが、考えてみればそれは当然の帰結だ。
あれが、魔武器による人工のものなのか、自己の力による天然のものなのかは分からない。
だが、彼女は戦姫と呼ばれるような象徴的存在。
そんな人物が、魔刃という近接戦闘に於いて絶対的な威力を誇る技を扱えないわけがないんだ。
「君のそれが、どれだけのものか知りたくなった。構えろ、クレア。ここから先は魔刃使い同士の戦い」
彼女の剣気に満ちたその姿からは、先程までの無防備さは消え失せ、構える剣にも一切の隙はない。
「気を抜けば、一瞬で終わるぞ?」




