資質
「改めて自己紹介をしておこう。私はニーア・シュヴァルツァー。王国に仕える戦士にして、上級冒険者としての肩書きも持っている剣士だ」
『……クレアです……よろしくお願いします』
移動後。
唐突に名乗りを口にしたニーアさんに、少し遅れてクレアが名乗り返して頭を下げる。
それに対して、ニーアさんはなぜかしきりに頷いてみせ、どこか満足げな気配を漂わせていた。
「やはり、すごいな君は。その若さで、その域にまで足を踏み入れるとは。いやはや、見事と言うほかないな」
『……ありがとうございます』
「うん。本当に、これほど驚いたのはいつぶりだろうか。ある意味では、アンネローゼの報せを受けた時よりも衝撃的だったかもしれない」
先程から彼女が妙に昂っている様子なのは、どうやらクレアの魔力操作技術の高さに感心し、それがどれほどのものかを、これから直接確かめることができるからだったようだ。
その高揚ぶりを表すかのように、彼女は左手で何度も腰の剣帯を揺らして、今か今かと戦いが始まる瞬間を楽しみにしているようだった。
「それぐらい私は君に期待をしている。さぁ、見せてくれ。君の力を。その資質が本物だという証左を!」
そう言って、ニーアさんは我慢ができなくなったのか、剣を引き抜くとその先をクレアへと突きつけてみせた。
それに触発されるように頷いて同意を示したクレアも、二本の短剣を引き抜いてみせると、地面を蹴りつけて一気にその場から飛び出した。
小さく、何度も地を飛び跳ねるその様は、まるで地面を滑っているかのようになめらかで、ともすれば超低空を飛行する妖精と言っても過言ではないほどに綺麗な所作だ。
『……やっ!』
そして、あっという間にニーアさんに肉薄したクレアは、跳ねる勢いを利用して、相手を刺し貫くような突きを放ってみせる。
だがもちろん、剣の扱いに於いては比肩する者がいるのかも怪しい戦姫を、その程度の攻撃で唸らせることができるわけもなく、あっさりと処理されてしまう。
『……やぁっ!』
それでも、自分にできる限りの最善を尽くすために、クレアは最短で最速の一撃を連続で放ち続ける。
相手に隙が生じる瞬間を待ちわびるかのように、何度も何度も高速で全身を稼働し続ける。
「ふっ、どうしたクレア。小手調べでもしているつもりか、これは? ならばもういいだろう。出してみせろ、奥の手を。あれ程の念話を扱える君だ。当然あちらの技も習得しているはずだろ」
その言葉が何を指しているのか、知っている者であれば当然理解できるそれを要求されたクレアは、回し続けていた手を止め、ニーアさんからわずかに距離を取る。
そして、相手がその気ならという風に深呼吸をしてみせると、ニーアさんの願いに応えるように、その技──魔刃を発動させた。




