妨害戦4
「その程度で、我が剣を阻めるとでも思ったか!」
それを前にして、ニーアさんは怒声を上げると、剣を握る手を引き絞るようにして力を込め、一閃の下にその土壁を斬り捨てようとする。
が、その直前。
彼女の視線は、自身のわずか手前へと落下してきた矢へ吸い寄せられるようにして、そちらへと向けられる。
「いえ、思っていませんよ。でも、だからといって、なにも防げないってわけでもないんですよ」
重力に引かれて垂直落下してきた矢は、その真下に突き刺さっていた短剣の下へと一条線の軌道を描いて到達。
そして、鏃と柄頭、共に金属でできたそれらが接触した瞬間、視界が白むほどの爆発が起こり、轟音と熱波が襲い掛かってきた。
「っ!」
それらに驚きながらも、その影響からクレアを守るために、いくつかのスキルを発動させ前へ躍り出る。
そこで、なにが起きたのかを確認するためにその中心部へと視線を飛ばすと、そこには土壁を足場にして立つ無傷のニーアさんと、彼女の剣を突きつけられたミリオの姿があった。
「私の勝ちだな、少年」
「……そうですね。はい、完敗です」
勝利を宣言したニーアさんと、敗北を受け入れたミリオ。
その二人の周囲は、爆発の余波で黒く焦げてしまっていたが、一部だけ不自然にその影響を受けていない空白地帯が存在している。
なにがどうしてそうなったのかは分からないが、とにもかくにも勝敗は決し、武器を収めた二人は会話をしながらこちらへと戻ってくる。
「なるほど。自身の力不足を補うための手段として、魔術に依るものではなく、火薬を用いた矢を用意したというわけか。なかなかに強かだな君は」
「いえ。自分の無力を誤魔化すためには、そのぐらいはしなければ意味がないですから」
「ふむ。まぁ、自身の力量を正確に把握できているのはよいことだ。が、それにしても弓を扱うのならば、せめて複数の矢へ同時に魔術を付与できるようにはなっておけ。せっかく複数の属性を操ることができるのだからな」
「ええ。そうですね」
火薬?
ってことは、さっきの爆発はミリオが矢に仕掛けていたそれが原因で起きたやつだったのか。
……いや、危ないな。下手したら相手死ぬぞ、それ。
なぜかニーアさんは真正面でそれを受けたのに無傷だけどさ。なんでかは知らんけど。
「あの。それより、参考までに聞かせてほしいんですけど、どうやってあの爆発を切り抜けたんですか? 一切影響を受けていないように見えるんですけど」
「あぁ。あれは、斬った」
「……え? 斬った。っていうのは、爆発をですか?」
「うん。爆発なんてものは、程度の違いはあれど所詮衝撃波の類いだからな。斬ろうと思えば斬れないこともない。だろう?」
文字通り斬り抜けた、と言われて困惑したのか、ミリオは「……はい」と返すだけで精一杯だったようで、こちらに戻ってくるまでそれ以上はなにも言わずじまいだった。
……うん。まぁ、普通斬れるものじゃないからな。




