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終わらない一日

 それからどれぐらい経っただろうか、辺りが少しずつ暗くなり始めた頃、森の終わりが見えた。出口に到着したんだ。


 「おぉ。着いた」

 「はい、お疲れ様。良かったわね何事もなくここまで辿り着けて。今からなら急げば丁度いい時間に帰れるんじゃない?」

 「いや本当助かったよ、ありがとう。本当は今すぐにお礼をしたいところなんだけど、生憎あいにく持ち合わせがなくてさ。今度またそっちにお邪魔した時に何か見繕って行くよ」


 一人でさ迷っていた時はどれだけ走り回っても一向に森を抜けられる気配すらなかったのに、案内役がいれば歩いてもこんな短時間で出口まで出てこられるものなんだな。正直、こうやってここまで連れてきてくれたことにはどれだけ感謝してもしたりない程だ。お礼の品は多少奮発して良いものを持っていくとしよう。


 「そ。じゃあアタシは何でもいいから本を一冊よろしく」

 「私はねぇ、甘いお菓子がいいなぁ。お茶に合いそうなものなら何でもいいよ」

 「…可愛い、人形」

 「え? あ、はい」


 …あれ? 別に俺要望を聞いたわけじゃなかったんだけど。

 まぁいいか、どうせ渡すなら一番喜んでもらえる物をあげたいし。でも、お菓子と人形はいいとして、本って確か結構な高級品じゃなかったっけ? ミリオが何かそんなことを言っていたような気がする。…どうしよっかな。文字の練習がてら写本でも用意するか? 何でもいいって言ってたし、家にある本のどれかを書き写したものをプレゼントすればいいか。


 「まぁ、あまり期待はしないでほしいけど、できるだけ要望には応えるようにするよ」

 「ん。まぁ気長に待ってるから、いつでも来なさいな」

 「じゃあね、アスマ。今度来るときは妹も連れてきてね」

 「…ばい、ばい」

 「あぁ、じゃあ本当にありがとう。またな」


 三人に手を振り別れを告げ、踵を返し歩き出す。

 今日は本当に色んなことがあったな。高性能な指輪を拾い、オークを倒し、エルフの水浴びを目撃して、そのエルフの三人娘と知り合って、獣人の村の村長とも知り合いになった。

 正直、この世界に来てから一番濃い一日だったことは間違いないだろう。というかよく死ななかったよな俺。まぁ運が良かっただけなんだけど。

 指輪を拾ったことにしても、知り合った人たちがたまたま好い人たちだったことも、致命傷を完治させる手段がそこに存在したことも。どれか一つでも欠けていたら確実に俺は命を落としていただろう。でも、ここまで上手く事が運びすぎていると何か作為的なものを感じるな。偶然なんだろうけど、全部が仕組まれたことのように思えてくる。

 お約束としては、良いことが重なって起こった後には悪いことが待ち受けているっていうパターンなんだけどな。ここで後ろを振り返ると三人の裏切りイベントが発生したりとか。まぁ、さすがにそれはないと思うけど。

 そう思いつつも変な想像をしてしまったせいで少し怖くなってしまったので、その場で後ろに振り返る。

 すると三人はまだその場に留まっていて、何かを話し合っているような雰囲気だった。

 何だ? あんな真剣な表情で何の話をしてるんだろ?

 そう思って三人を見ていると、三人は来た方向とは違う場所に走り去っていった。

 何かあったのかな?…どうしよう。早く帰りたいところはやまやまなんだけど、三人の動向が気になる。もし、何か問題が発生したのなら俺も手を貸すべきなんじゃないか? どれだけ力になれるのかは分からないけど、人手が必要になっていた場合俺がいることで何かできるのだとすれば今行かなければ手遅れになる場合もある。大したことがなければすぐに戻ってくればいいし、とりあえずは状況確認のために三人の後を追うことにしよう。

 枝葉を掻き分け、道なき道を突き進み、何か妙な匂いが俺の嗅覚を刺激した。…この匂いって、もしかして、何かが燃えてる?

 この焦げ臭さはたぶん間違いない、何かが、というかこの場面で何が燃えているかなんて明白だろう。

 俺は匂いが特にきつい方へと足を進めた。すると、徐々に熱気が押し寄せてきて額に汗が浮かぶ。歩を進めれば進める程に熱気は強くなり、もうすぐ夜だというのに辺りは明るく照らされ、明かりの中に黒い煙が立ち込めているのも見える。そして、火元と思われる場所に辿り着いた時、そこには先程別れたエルフ三人娘と、それに対峙するような位置に数えるのも億劫になるほどのゴブリンの群れがいた。

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