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斧の戦姫2

「一撃、かよ」


 たったのそれだけで、あのガルムリードを沈めてしまったという事実に呆然としてしまう。

 強いというのは分かっていた。圧倒的だというのは分かっていた。

 ただ、それでも。たとえ相手が戦姫だろうと、なにか一つぐらいはこちらの力を示すことができるんじゃないかと思っていた。

 その認識は甘かったのか?

 やっぱりアンネローゼが特別だっただけで、俺たちじゃ戦姫からその力の一端すら引き出すことはできないのか?

 ……いや、たとえそうだったとしても、俺は。


『……ガルム君!』


 戦姫とのあまりに隔絶した実力差に呆けていると、隣に控えていたクレアがガルムリードの下へと駆け寄ろうとしているところだった。

 その姿を見て、今さらながらにガルムリードの身を案じる思考が浮かんできたことに辟易しながらもその後に続こうとするが、「待って」というミリオの声に俺とクレアは足を止めてそちらへと視線を移す。


「大丈夫だよ。あれならまだ」


 その言葉に「え?」という間の抜けた声で返していると、周囲からどよめきの声が上がり、それに釣られるようにして顔を向ける。


「うん。ガルルン、すっごい丈夫だもんねー」


 というアンネローゼの言葉を証明するように、しかめっ面をしたガルムリードが立ち上がり、レウナーレさんを睨みつけていた。


「おい待てこら。なに勝手に終わらせよぉとしてやがんだ。こっからがおもしれぇんだろぉが。勝負ってやつはよ」

「……あれ? 立ち上がってくるんだ。結構強く叩いたつもりだったんだけど」


 レウナーレさんにとってもそれは予想外だったようで、声に少し驚いたような響きが感じられた。


「おう、かなり骨身に響いてきたぜ。けど、そんだけだ。俺をぶちのめしてぇんなら、もっと本気で掛かってこいや」

「うわぁ。これ面倒くさいやつだわ。気分悪いって言ってるでしょうに」


 本当にそう思っているようで、彼女の声はげんなりとしていて、まるで元気というものを感じられないほどだった。


「おい、レウ。もう少し真面目にやれ」


 そんなレウナーレさんを見かねてか、ニーアさんが彼女をたしなめるように声を掛ける。


「強者が相手でなければ気が乗らないのは分かる。だが、これは彼らの資質を確かめると同時に、これを見た者の向上心を煽るために重要な戦闘だ。気を抜くのは構わないが、戦姫として役割は果たせ」

「……ふぅ。はいはい。正論ありがとうよ」

「うん。どういたしまして」


 皮肉が効かない手合いなのだろう。

 ニーアさんはレウナーレさんの言葉にそう返すと、「じゃあ、頼んだぞ」と信頼を寄せた言葉を送る。

 それに対してレウナーレさんは疲れたように手を振って応え、ガルムリードの下へと戻っていく。

 ……というか、なんでわざわざ外でやるのかと思ったら、そんな思惑があったのか。

 俺たちへの対応から、見込みのある者を探しているという意図は理解していたが、住民の全体的な成長を促そうとしているのはどういうわけなんだろう?

 考えてもどうせ答えはでないし、今は考え事をしている場合じゃないけど、なんか気になるな。

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