斧の戦姫
強気な発言と共に腕甲を打ち鳴らしたガルムリードは、拳を構え軽く足を曲げる。
「お前も構えなぁ、斧使い」
「ふぅ。よっこいせ。はい、いいよ。どっからでも掛かってきな」
レウナーレさんは杖代わりに使っていた自分の身長と同程度の、二メートルはありそうな長大で分厚い刃のついた戦斧を軽々と振り上げて肩に担ぐ。
そして、まるで挑発でもするようにガルムリードへとぞんざいに手招きをしてみせた。
「おうよ。いっくぜぇ!」
その挑発を受けたガルムリードは、掛け声を上げると同時、地面を勢いよく蹴りつけ一気にレウナーレさんとの距離を詰める。
以前よりも速度とキレが増した跳躍に、ガルムリード自身の気迫も合わさり、まるで本物の獣かのような速度で一瞬の内に肉薄すると、正面から小細工抜きの一撃を彼女の顔面に目掛けて打ち込んだ。
「おぉぉらっ!!」
唸りを上げるような強烈な一撃は、まるで避ける素振りすらみせなかった彼女の兜と接触し、けたたましい金属音が辺りに響き渡る。
俺たちも、周囲で見ていた観戦者たちも、同様に「うわ」という声を上げてしまうほど痛々しい光景に、思わず目を背けてしまう者もいるほどだったが、ガルムリードの攻撃はそこで止まらず、手足を連続で振るい、さらに猛攻を重ねていく。
「なに棒立ちしてやがんだこらっ! 手が出ねぇってわけじゃねぇんだろぉが! ちっとはやり返してみせろや!」
だが、どれだけの連撃を受けても動きを見せないレウナーレさんに、痺れを切らしたガルムリードが怒りの声を上げる。
それもそうだろう。
先程の強烈な初撃に続き、その後に続く猛打にもレウナーレさんは一切反応を見せないんだから。
攻撃が効いているのならそれでもいい、反撃があるのならそれでもいい。
でも、彼女はただただ立ち尽くしているだけで一言を発することすらしないのだから、相手にもされていないようで苛ついてしまうのも無理はない。
「なんとか言ってみろよ! らぁっ!!」
そして、再度ガルムリードの拳がその兜を痛烈に叩いた時、レウナーレさんの体がびくりと動き、直後に真上から振り下ろされる戦斧。
「うっさい」
「がっっ!?」
彼女が雑に振るった戦斧はその平面でガルムリードを叩き潰し、そのあまりの衝撃に彼の体は半ば地面へと埋没してしまっていた。
「ガルム!?」
「……あっ、しまった。あんまりにもガンガンするから思わず叩いちゃったわ。ま、気持ちよく何発も打ち込んでたことだし、もういいでしょ。はい、それじゃあ終わり終わり」
締めくくるようにそう言ったレウナーレさんは、頭痛を堪えるように頭を押さえてみせ、とりあえず自分の番はおしまいとばかりにニーアさんの下へと帰っていく。




