封魔領域14
真の、魔刃?
今までの魔刃が未完成のものだったっていうのか?
あれで? 冗談だろ?
しかも、完成形の魔刃は一年以上の時間を掛けて造られる魔刃武器よりもさらに上って。あり得ないだろ。
「ただし、魔刃を完成させたからといって、今のクレアちゃんにそれを十全に扱えるのかと問われれば、答えは否だ。見て分かるだろうがな」
それは、まぁその通りなんだろう。
俺がここへ来るまでにも同じような訓練を続けていたのだろうが、それでも先程まではまだクレアはそれなりに余裕を持っている様子だった。
でも、あの魔刃を発動させてからたったの数秒で残りの魔力をほぼすべて使い切ってしまったように見えた。
それが意味するところはつまり、魔力の消費量がこれまでの魔刃とは桁違いだということだろう。
「あぁ、その通り。先の魔刃はこれまでのそれと比較すると甚大な魔力を消費するという、ある種の欠陥を抱えていてな。それ故にわずかな時間発動させているだけで、これこの通りだ」
「え? 俺、今考え声に出してた?」
「いいや、貴様の考えそうなことなどすでにお見通しだからな。思考を先読みして答えさせてもらったまでだ」
うん、まぁ、シャーロットの規格外っぷりは今に始まったことじゃないから別にいいんだけどさ。俺ってそんなに分かりやすい思考してるのかな?
「あー、はい。いや、でもさ。ちょっと話は変わるんだけど、そもそも領域を克服することで魔力操作能力を向上させて、魔刃の消費魔力を軽減させるっていうのがこの訓練の趣旨じゃなかったっけ?」
って言ってたはずだよな? 俺の記憶違いじゃなければだけど。
「それなのに、なんでその魔刃を完成させたら消費魔力が跳ね上がるんだよ。矛盾してないか?」
「矛盾はしていないが、たしかに我の説明の仕方が悪かったかもしれん。そこはこちらの落ち度だ」
シャーロットは「悪いな」と言って軽く頭を下げるが、謝らせるつもりはなかったので少し罪悪感が生まれてしまう。
が、今はそれに気を取られている暇はないので一旦その感情は心の隅にしまっておくことにする。
「まぁ、こう考えばよい。クレアちゃんが今までに使っていた魔刃と、先程見せた魔刃。この二つはまったく別のものであると」
「はぁ。そう、なのか?」
「ややこしくなるからそう思っておけ、という話だ。ややこしいついでに。これからは後者の魔刃は『魔閃刃』と呼ぶことにしよう。それで少しは理解しやすくもなるだろう」
魔閃刃か。
まぁ、たしかに。あの魔刃とか、この魔刃とか言ってたら頭がこんがらがっておかしくなりそうだし、わりといい考えかもしれないな。
「そうだな。そうしてくれると助かるよ」
自分でそこそこ理解力はある方だと思ってるけど、その言葉が出る度に処理してたら話に集中できなさそうだし。