封魔領域12
『……っ!』
そして、鋭い吐息と共に魔力を解放。
刀身に沿うように纏わせ、薄く鋭く形成していく。
淀みなく、瞬く間に行われるそれは、まさしく絶技と言っても過言ではなく、煌めく魔力光が圧倒的な存在感を放ち、その凄まじさをまざまざと見せつけてくる。
『……やあぁぁっ!』
最後の仕上げとばかりに気合いの一声を上げたクレアは、さらにその魔力光を収束させ──
「……そんな馬鹿な」
そうして形作られた魔刃は、完全に刀身と一体化したような見た目をしていて、まるで剣そのものが光輝いているように見えた。
『……やっ……た』
その出来映えに満足したように微笑むクレア。
だが次の瞬間、まるでそれが合図だったかのように刀身から魔力が溢れ出し、それは虚空へと消え去っていった。
そして、瞬時にそれだけの魔力を失ったクレアも、糸が切れた人形のように唐突に地面へと倒れ込む。
「っ!!」
が、直前までその挙動に集中していたために、なんとかクレアが地面に崩れ落ちる前にその体を抱き止めることに成功する。
「おい、大丈夫かクレア!」
ぐったりとした体を支えて呼び掛けると、クレアは反応が鈍いながらもなんとかそれに応え、弱々しくはにかんでみせた。
これは、魔力を使いすぎたことによる枯渇現象だろうか?
俺も枯渇寸前ぐらいまでは何度か魔力を消費したことはあるが、ここまで弱ってしまうほどに使い切ったことはないため、クレアの苦しみを完全に分かってやることはできないが、それでもこの状態が相当辛いということだけは分かる。
なので、こういう場合の対処法を仰ぐためにシャーロットへと視線を向けるが、なにか考え事をしているのか、彼女は口元に手を当てブツブツとひとり言を漏らして、こちらを見ていなかった。
「先生! シャーロット先生!」
だが、大きな声で呼び掛けると、びくりと肩を震わせた後にこちらへと視線を合わせ、俺の腕に抱かれたクレアの姿を見て目つきを真剣なものへ変える。
「すまない、少し呆けていた」
そうして謝罪の言葉を述べつつも、シャーロットはこちらへと近づいてくるとなにかを確かめるようにクレアの手を取る。
「ふむ。魔力が尽きかけているな。その場で安静に、少し待て」
そう簡潔に指示を出すと、彼女は薬棚の一つを開き、その中から透明の薬液が入った小瓶を取り出して、蓋を外したそれをクレアの口元へと近づけてきた。
「クレアちゃん。少し苦いがこれを飲んでくれ」
シャーロットがそう言うと、クレアは素直に従い、ゆっくりとそれを飲んでいく。
そして、薬を飲み干して幾ばくかもしない内に、全身から余分な力が抜け落ちたかと思うと、クレアは静かな寝息を立て始めた。