封魔領域9
「おお! できた!」
直前に一度失敗していただけに、今度も無理なんじゃないかという弱気が見え隠れしていたため、この結果が嬉しくて思わずはしゃいでしまう。
正直、上手くいくか自信はなかったが、シャーロットが間違ったことを教えるわけがないという信頼感に後押しされ、余計なことを考えずに全力を出しきったことがこの成果に繋がったわけだ。
まぁ、それは少し盲目的な信頼感かもしれないが、これまでに彼女が俺にもたらした実績はそれほどまでに大きなものであり、多少信頼しすぎてしまってもそれは仕方のないことだろう。
尊敬できる先生ってそういうもんだろうし。
「うむ、それでいい。領域と言えば聞こえはいいが、ようは魔力操作を妨害するために薄く魔力を展開しているだけのこと。ならば、漂う魔力をそれ以上の魔力で押し退けてやれば、このように簡単に突破できるというわけだ」
「ほう」
「ただし、力づくで押し退ける分、魔術を発動させる場合も本来必要とする以上の魔力を消費するはめになる。さらに、領域内の魔力に干渉すればするほどに魔術の威力は弱まり、果てには消滅してしまうのであまり褒められたやり方ではないがな」
それはそうだろうな。
実際、このやり方は魔力操作が下手なやつが苦肉の策として用いる手段であって、正規の突破法に比べると無駄がすぎるやり方だ。
それでも魔力量に自信があるのであれば然程問題にはならないのだろうが、もちろん俺はそんな自信を毛ほども持ち合わせてはいない。
ということで、結論としてシャーロットがなにを言いたいのかといえば、こうすれば魔術を発動させることはできるが、よっぽどの勝算がない限りは魔力の無駄だからやめておけ。
もしくは、領域の干渉を極力受けないようにするために、魔術を発動させるなら近距離で撃てといったところか。
でも、近距離なら物理的に攻撃した方が早い可能性もあるので、そこは自身で見極めなければいけないだろうけど。
「なるほどな。まぁ、使おうとすれば使えるってことだけ頭に入れておくことにするよ」
「あぁ、手札の一つとして持っておけばそれでよい。元々魔術なんてものはそれぐらいのものなのだからな」
「ういっす」
結局のところ、どんな手も使い方というか、使う場面によってその有効度は違ってくるわけで、使えるからといって必ずしも使わなければいけない、というわけではないということだ。
最善の手を打ち続けることが戦いにおいて重要なことに違いはないのだから。